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#5 自称天使

「さて……ところで調子はどうかしら?」

平然と尋ねてくる。


僕の周りをゆっくりと一週し、真横で立ち止まる。そして、肩に手を置かれた途端、体が硬直する。


「ど、どうもこうもない…それより、お前はいったい何者なんだよ。教えろ」

体の動きが制限されているだけで、苦しいとかはない。声も普通に出せた。


「私は、あなたに入れ替わり現象について説明するためにやってきた『天使』よ」

「天使?入れ替わり…?なんの話だよ……分かりやすく頼む…」

どう見ても胡散臭い。普段なら絶対関わりたくないが、会話続けざるを得ない状況のため、仕方なく会話をする。


「はっきり言うとね、どちらかの身に命の危機が迫っているの」

平然と説明する。

「命の危機?……って、騙されないからな」

いかにも怪しい。しかし、命の危機という言葉にドキリとする。

「騙そうとしていないのだから、騙される心配もないでしょ?」

そう言われると、何も言えなくなる。


「…それで、その危機と入れ替わりに何の関係があるんだよ」

「命の危機を前にして、対象者が強く念じた人物とリンクしてしまうことがあるのよ」

僕の問いに淡々と答える。


嘘偽りなど一切ないかのように、浮き世離れした話を続ける。その雰囲気に呑まれ、思わず信じてしまいそうになる。


「まじかよ…」

頭が混乱している。


「リンク……何か強くて大きな力によって、意図せず人と人が繋ぎ止められてしまう現象よ。互いの引き合う力の差があまりにも大きいと、君たちみたいに入れ替わりを起こしてしまうのよ」


でっち上げた話だと思いたいのだが、彼女のやけに生々しい言動が引っかかる。


信じたくない気持ちが口を動かした。

「なんだよ!じゃあ、僕が妹に対して強い想いを抱いていたから、こうなったとでも言うのかよ!」

「その逆もありえるわね」

表情や声のトーンを、一切変えずに話す。


その言動で抗いたい気持ちが折れた。

「信じたくねぇけど……それが…事実だって……言い張るんだろ?」


その問いに静かに頷く。


「……この現象を止めるには、どうすりゃいいんだよ…」


その声は震えていた。妹か自分の命が残り少ないと断言されたのだから無理もない。不本意だが、すがるような気持ちで訊かざるを得なかった。


「そうね……打開策としては、お互いのやましいことをすっきりさせることかしらね―」

と言いながら、いくつかの決まり事を教えてくれた。


~~~~~~~~

命の危機は引き伸ばすことも避けることもできない。それがいつ訪れるのかは分からない。


この事象を口外すれば、その分、対象者の余命を減らすことになる。


入れ替わった状態でタイムリミットを迎えた場合、相手も対象者と同じ道を辿ることとなる。


対象者が心残りなく旅立てると思えた時にのみ、現象は終末を迎える。

~~~~~~~~


要約するとこんな感じだ。

対象者とは一体どちらのことなのか気になったが、それは彼女でも分からないことらしい。


その日は極力、人と会話をせず過ごした。勝手が分からないというのもあるが、それ以上に人と会話をすることが怖いからだ。


家に帰り、妹に連絡を取る。

自称『天使』のことを話した。半分信じていないようだったが、とにかく口外しないことだけは約束した。

そして生活する上で必要な知識を互いに教え合い、決まりを定めた。やっていいことと、やってはならないこと。兄妹とはいえ、互いのプライバシーを守らなければならない。


自称『天使』の言う打開策については話さなかった。話して解決することではない。少しずつ探りを入れてみようと思った。

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