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【コミカライズ】王宮浪漫に巻き込まないで!  作者: 渡里あずま


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新たな推し活

 まず、ルナリア様がエルダー様に嫁ぎ。次に私が、シラン様に嫁ぎ。

 それでも、エルダー様が成人となるまではと、私達は王宮にお世話になっていたのですが──ディアスキアに来てから、およそ一年。エルダー様が成人である十六歳になったことで、私達は王宮からシラン様の用意した館に引っ越すことになりました。


「だから、その前にこの三人でお茶会がしたかったの」

「あ、はい」

「本日はお招きいただき、誠に」

「この場では、堅苦しいことは不要よ! あなたは、ミナのお友達なのでしょう? 友達の友達は友達。つまり、私とフォーム女侯爵も友達と言っても過言じゃないわ」

「過言ですわ!?」


 あっさりととんでもないことを言うルナリア様に、ユニフローラ様が思わず声を上げます。私も同感でしたので、フォローに回ることにしました。


「ルナリア様……まずは、親睦を深めましょう? ユニフローラ様に、お勧めして頂いた本の感想をお伝えしたかったのでしょう?」

「そう! お勧めされた『月と呼ばれし意味』! 家族や元婚約者に虐げられた令嬢が、成り上がり将軍に溺愛されて幸せになっていく……令嬢は、同性である私から見ても聡明で美しいから溺愛も納得だったわ。ちゃんと、令嬢を貶めた者達には天罰が下るし。ページを巡る手が、止まらなかったわ」

「っ! そうでございましょう!? 作者は表に出てこないのですが、令嬢や宴描写からおそらく貴族令嬢か貴族夫人、または高位貴族に仕える侍女だと言われています」

「まあ、そうなの。フォーム女侯爵は、博識なのね」

「もしご迷惑でなければ、私のことは名前でお呼び下さいませ。ところで、同じ作者の新作である『愛しきグーヴェルナント』は読まれましたか?」

「っ!?」


 共通の話題に対して、楽しそうに話す二人を微笑ましく眺めていると、予想外の単語を聞いて私は思わず飲もうとしていたお茶を吹き出しそうになりました。何とか堪えましたが、おかげで鼻がツンとしましたので、咳払いを装いながら私はハンカチで鼻や口を押さえました。

 そのリアクションと言うよりも、本のタイトルになっているグーヴェルナント(ディアスキア語の『女家庭教師』です)から、私がモデルだと連想した二人がこちらを見てきます。


「……私が書いた話では、ないですよ?」

「解ってますわ。文体は変えることが出来ますが、それでも話の展開や作者の好みの違いから、別人だと解ります」

「おそらくだけど、ミナをモデルにした小説ってことよね……ユニフローラは、もう読んだの?」

「ええ。平民の女家庭教師が異国語が話せることを理由に公爵家に雇われ、美貌の公爵令息に見初められてって話でした……よろしければ、差し上げましょうか? 布教用に数冊、買っておりますので」

「まあ、嬉しい! 読むのが、楽しみだわっ。やっと時代が、ミナに追いついたのね!」

「ルナリア様、何を……」

「だって、ミナは本当にすごいのに! そりゃあ、ハーブについてや『ディアスキア物語』の作者だって、尊敬はされていたけれど……リアトリスでは、ミナが当事者だとはあまり知られなくて」

「まぁ……」


 それは、私が平民だからですね。気遣ってくれているルナリア様と、気付いたらしいユニフローラ様が気まずそうにしていますが、むしろ事実なので私は全く気にしていません。

 だから私は、思っていることをそのまま口にしました。


「私は目立つのが苦手なので、正直、リアトリスの時の扱いくらいが性に合っているのですが……シラン様の妻となった以上、そうも言っていられません」


 と言うか、シラン様をモデルに小説を書いた私が、自分がモデルになるのは嫌だとは言えませんからね。

 しかしながら、私は私で言い分があります。


「ルナリア様は、私のことを仰ってますが……私としては、もっとルナリア様のことを推し……お勧めしたいのです」

「「えっ?」」

「シラン様とはお勧めの仕方が異なるので、流行りの小説のように波乱万丈ではなく……ルナリア様が、どれだけ素敵な方なのかを書こうかと思ってるんです」


 イメージとしては『枕草子』でしょうか? エッセイのイメージが強いですが、あの作品では清少納言が中宮定子を褒めちぎってますからね。

 もっとも襲撃の件は表沙汰に出来ないので、とにかくルナリア様の可愛らしさや、エルダー様とのラブラブな日々を書くことに需要があるかは解りませんが──元々、私が小説を書くのは売れる為ではなく『書きたいから』ですので問題ありません。


「私を? そんな……」


 そう言った私に、ルナリア様は照れたように頬を染め(そんなところも可愛らしいです)ユニフローラ様はしっかり食いつき、身を乗り出してきました。


「素晴らしいですわ! 少なくとも私は読ませていただきたいですし、本にすることもやぶさかではございませんわ!」

「気が早いです……まずは、書き上がったら読んでみて下さい」

「喜んでっ」


 こうして、私達三人のお茶会は予想外の盛り上がりを見せつつも、無事終わり。

 波乱万丈も良いですが、ほのぼのも良いとなり、ルナリア様の布教だけではなく、恋愛小説のバリエーションが増えたと、ユニフローラ様からお礼の手紙が届いたのでした。

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