思いがけないサプライズ
シラン様と婚約し、ディアスキア国で暮らすことになった私に、シラン様はドレスを用意しようとしました。
そのこと自体はありがたいと思いました。服は普段、着ているものと洗濯している間のものの二着だったからです。
ただ、シラン様は普段着も全てオーダーメイドで用意しようとし。仮にも皇族の婚約者となるので気持ちは解るのですが、それだと時間がかかります。宴の時のように、カルーナ様に無茶をさせるのは忍びなく、ただどうすればいいのか解らず、カルーナ様に相談したところ、思いがけないことを言われました。
「シランからの注文も請けるが、普段使いのドレスは私の若い頃のものを何着か譲ろうか? もっとも、好みもあるだろうからよければ週末に、実家に来ないかい?」
「ご実家、ですか?」
「ああ」
カルーナ様のご実家とくれば、近衛騎士団長・ヒルスタス様のお屋敷です。そして、シラン様やユッカ様も暮らしていたところです。
「母もいるから、ドレスを見たら女三人でお茶会をしよう。あ、だから今回はシランは送り迎えまでだ。居座る気はするが、絶対にお茶会には参加させないからね」
「は、はい」
相変わらず無表情ですが、前回の宴の時のようにカルーナ様は今回の女子会を楽しみにしている気がします。だから恐縮しつつも、私は素直にカルーナ様の提案に乗ることにしました。
※
そして、週末。送ってくれたシラン様は応接間に残し、私とカルーナ様、そしてヒルスタス様の奥方である、ティアレラ様と三人でカルーナ様の部屋へ移動しました。
「……まあ……っ」
その部屋を見た瞬間、私は思わず声を上げていました。
可愛いものが好きと聞いてはいましたが、カルーナ様の部屋はフリルやリボン、レースで溢れていました。色が淡くて『可愛い』に品良く収まっていますが、本当に乙女趣味です。
(まあ、でも、自室なら趣味に走っていいですよね)
声に出さずに思っていると、この部屋でお茶会をするらしく、侍女の皆様が用意を始めました。その間、カルーナ様が見せてくれたドレスは生地こそ上等ですが、落ち着いた色のシンプルなもので眼鏡な私でも安心して着られそうです。だから、お礼を言ってありがたく数着、譲り受けることにしました。もっとも、身長や体型(主に胸)の差があるのでカルーナ様が微調整してくれることになりましたけどね。
「部屋や小物は自分の好きに出来るが、好きと似合うは残念ながら別だからね……子供の頃は、母親似じゃなかったのを恨んだものだ」
そして三人でのお茶会で、カルーナ様はそんな話を始めました。
確かにティアレラ様は榛色の髪と瞳をした、小柄で可憐な女性です。カルーナ様は父親似で美人系ですが、ティアレラ様に似ていれば確かに可愛いドレスも違和感なく着こなせたでしょう。
「とは言え、見た目を変えるのは限界があるからね。だから、似合う相手を存分に着飾ろうと思って、この職についたんだが……子供の頃は、人形への着せ替えだけでは満足出来なくて。シランやユッカにも着せたものだ」
「えっ?」
「母も可憐な女性だが、父が自分以外が母を着飾ざるのを許してくれなくてね。だから、シランやユッカに着せたんだ」
「えっ?」
ヒルスタス夫妻のラブラブエピソードも気になりましたが、それよりも私が引っかかったのはシラン様達の名前が出たことでした。驚き、声を上げる私に、カルーナ様は話を続けました。
「残念ながらシランは私と同じ系統だから、可愛いはあまり似合わなくてね。ユッカは、一緒に暮らした時期は短かったが、本当にフリルやレースがよく似合った……少年体型も、カバー出来たしね。おかげで、男がこんなに可愛くなるならと自信がついたよ」
「そう、なんですか」
シラン様がカルーナ様と同じ美人系なのも、同じイケメンでも確かにユッカ様の少年時代なら可愛い系がよく似合ったのも納得です。惜しむらくは、この異世界には写真が無いので見ることが出来ないことです。
そんな私に、カルーナ様が思いがけないことを言いました。
「私の素描があるけれど、見てみるかい?」
「ぜひ」
「あら! 私も、久々に見たいわぁ」
即答してしまいました。一方、おっとりとお茶を飲んでいたティアレラ様も、弾んだ声で賛成しました。
……そうして見せて貰った素描には、カルーナ様の仰る通りよく似合っている少年時代のユッカ様と、少しでも似合うよう、リアトリス風のドレスを着た美少女シラン様が描かれていて。
(推しの少年時代……! しかも、女装……っ!)
あまりの眼福に思わず拝んでしまった私を、カルーナ様とティアレラ様が微笑ましげに眺めていました。
コミカライズ第7話を拝見しましたら…カルーナ様が、イケメンでして!
男装姿も、ドレスアップした姿も素敵です。あと、主人公・ミナも可愛くドレスアップしてます…ハーフアップ万歳!(≧▽≦)そんな訳で、本編後の話を妄想しましたが…あれ? どうしてこうなった?(笑)




