表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】王宮浪漫に巻き込まないで!  作者: 渡里あずま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/70

トラウマと煩悩と

ルナリアの婚儀を、到着から三ヵ月後から二ヵ月後に変更しました。

 自覚の無かったトラウマが発覚し、黙り込んだ私にエリカさんは言いました。


「余計な口出しして、本当にごめんなさい。女官長に、侍女を替えて貰うように」

「……え? いえ、すみません、大丈夫です!」


 申し訳なさそうな言葉に、私は謝りつつも先程のエリカさんのように片手を挙げて制しました。そして、深々と頭を下げました。


「却って色々と考える機会を与えて頂き、ありがとうございます。こちらこそ、ご迷惑でなければこれからもよろしくお願いします」

「ええ、それじゃあ……改めて、よろしくお願い致します」


 そう言った私に、エリカさんも言葉を侍女モードに戻して一礼しました。

 空気を読んで踏み込むのを辞めてくれたこととと、公私をしっかり分ける態度は本当にありがたいです――まあ、他に見ている人がいたら二人でペコペコ頭を下げているので不思議がられるでしょうが、実際は誰も見ていないので問題ありませんよね。



 さて、従姉妹だと判明したことで次の日の朝から変化がありました。


「これで素顔解禁しても、問題ないわよね!? お給金分、キッチリ仕事をさせてちょうだいっ」


 そう言われるとこれ以上、断ることも出来ず――着替えこそ死守しましたが朝、冷たい水を運ぶこと(水自体は前日、運んで貰っていましたがエリカさんとしては、一晩でぬるくなることが気になっていたそうです)と、洗顔後に髪をとかして結うのをお願いすることになりました。

 ちなみにこの世界、化粧文化はありますが富裕層文化なのと、いつもではなく宴や外出の時くらいです。おそらくですが、肌の白さより目元や口元を強調するものだからでしょう。とは言え、色白美肌はむしろ当然デフォルトなので、ハーブで作った化粧水はとても需要があります。

 余談ですが化粧水で肌を潤わせるのって元々、日本の文化でこの世界にはなかったんですよね。

 とは言え、私としては何もしないのは抵抗があったので香草の使用法を広める時に化粧水も広めました。元々が教会で作られていた薬なので値段も手頃で、おかげでこれらは平民も使うことが出来ます。


「でも、今日は紅くらいは差した方が良いんじゃない?」

「大丈夫ですよ。私が平民なのは周知の事実ですし、ほぼ眼鏡ですし」


 公私を分けることは大切ですが、とりあえず二人きりの時はお互い素の状態で話しています。

 そして、私の栗色の髪をとかしながらエリカさんがそう聞いてきたのは今日、シラン様の案内でルナリア様と一緒に近衛騎士団を見学に行くからです。


(シラン様にはすぐ、断らなくっちゃって思ってたけど……近衛のイケメンパラダイスが見られる誘惑には、勝てなかったのよね)


 気づけば、ディアスキアに来てからもう一ヶ月近くが経っています。

 あと一ヵ月後の婚儀までとも思いましたが、トラウマが発覚した今、絶対見込みが無いのに居座るのもあんまりだと思ったのです。


(つい、小説のネタへの煩悩に負けちゃったけど……今日の見学が終わったら、キチンと断ろう。そして、まずはリアトリスに戻って……また、次の仕事を探そう)


 髪を結われていたので、実際には出来ませんでしたが――心の中で、私は固い決意のまま拳を握りました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ