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【コミカライズ】王宮浪漫に巻き込まないで!  作者: 渡里あずま


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言われて初めて気づきました

「今まで、隠していて申し訳ありません。実は私は、エリカさんのお父様の兄の娘、つまりはあなたの従妹です。改めて、よろしくお願いします」

「……ちょっと待って下さい。どういうことでしょう?」


 叔父との対面の後、王宮に戻った私は入浴の支度の為、部屋に来たエリカさんにまずは事実を伝えました。

 そんな私にエリカさんは眉を寄せ、言葉通り片手を上げて言いました。

 無理もありません。それ故、立ち話も何なので食事の時などに使っているテーブルの椅子へと促して、自分の出自と今日の外出であったことを説明しました。


「そうだったんですか……父はさぞ、喜んだでしょう」

「……ええ、まあ」

「申し訳ありません、ミナ様。父は随分と、浮かれていたでしょうね……あなたのお父様の無事を信じつつも、手がかりが無さ過ぎて捜索は早々に打ち切られ。せめてと朝晩、私室で伯父様の肖像画に話しかけ。毎週、教会に行って無事を祈っていましたので」

「はあ……」


 叔父様について聞かれて何とかそれだけ答えると、淡々ととんでもないことを語られてむしろ突っ込みそうになるのを堪えました。相変わらず、いえ、思っていた以上に叔父の父への愛は重いようです。


(ブラコンにも程がある)


 とは言え、それで誰かに迷惑がかかっている訳ではないですし。

 ……正直に言いますと、これ以上踏み込むのは怖いので。気を取り直して、本題に入ることにします。


「私がこのことを打ち明けたのは、隠していてもいずれ解ると思ったからです。やり難いとは思いますが、ルナリア様の婚儀までですので……私としては、続けて頂きたいと思っています」


 私付きの侍女であることは、エリカさんが任された仕事なのでそれをどうするか――辞退するかどうかは、エリカさん次第です。同じ庶民ということで助かっていますが、無理強いは出来ません。


「お気遣い感謝します。そう言って頂けるのは、ありがたいですが……この後の話で、決めて頂けませんか?」

「はい」

「それでは、親戚というお言葉に甘えて……ちょっと良い?」


 そして親戚であり、二人きりということでエリカさんは敬語をやめて尋ねてきました。それに頷くと、エリカさんは思いがけないことを尋ねてきました。


「婚儀までって言い切るってことは、うちのシラン様には全く望みが無いってこと?」

「……えっ?」

「あ、他の人達は訳ありだとは思っていても、あなた……ミナのことは、短期留学生って思ってる。と言うか、信じたがってるって感じかな? 何せ、貴重な王族の独身男性だからね」

「あの……」

「あ、私の好みはもっと厳ついひとだから……って、そうじゃなくて。私はシラン様に、ミナから実家のことを聞かれたって話した時に「婚儀までに口説き落とす」って聞いてたから。今思うと、私とミナの関係性をご存知だったのかしらね」

「……シラン様がどうこう以前に、そもそも私は持参金を払えるような家の出ではありませんので」


 どうしましょう、いつの間にか外堀を埋められていました。

 それでも、一方でエリカさんは叔父程は熱心ではない――と言うと、語弊がありますが。さらりと適度な距離感で問いかけられたのに、私も(流石に、前世云々の話は出来ませんが)気づけば本音で答えていました。

 けれど、そんな私にエリカさんはつ、と眉を寄せます。


「ちょっと? 本気で嫌なら頑張って逃がすし、逆に遠慮してるなら背中押すつもりだったけど……それ以前に。ミナ? 王族相手に平民が持参金払うの? 破産どころじゃないわよ?」

「っ!?」


 言われてみれば、その通りです。

 確かに、逆手に取って無体を強いられるという一面はありますが(昔抱いたイメージは、前世でいう悪代官です)貴族以上であれば、また話は変わります。平民である私とはそもそも一般的な結婚ではなく、良くて側室。悪くて愛人。けれど一方で、持参金など不要です。


(愛人扱いが嫌ってこと? いえ……)


 そこまで考えて、私は自分の考えを否定しました。

 それこそ悪代官ならともかく、相手はシラン様です。愛人なんて恐れ多い。むしろ、壁で充分です。

 確かに萌えキャラと急接近するのは緊張しますが、嫌と言うのとは違います。萌え過ぎて悶えそうにはなりますが、決して嫌ってはいないのです。それなのに、シラン様を受け入れようとしないのは。


「あ」


 どうしましょう、矛盾を紐解いていくうちに気づいてしまいました。

 昔は前世に目覚めたばかりで、だからこそ大人(前世の自分)が語るもっともらしい理由で納得したつもりになっていましたが。


(前世は一人で死んだけど、現世は違う……お父さんはともかく、結婚なんてしたら私『が』大切な人を残して逝く可能性がある)


 それは母が死んだ時の喪失感を、愛する存在に抱かせるということです。

 ……だからこそ前世の記憶に目覚めた時、私はその恐怖から無意識に目を背けて独身を貫くことにしたのです。

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