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【コミカライズ】王宮浪漫に巻き込まないで!  作者: 渡里あずま


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叔父の癖が強い件について

「いきなり、失礼したね。私は、レギア商会長のブライヤーだ。ゆっくり話をしたいから、食事が終わったら隣に来て欲しい……そちらの方も、是非」


 眩しい笑顔でそう言うと、金髪の男性――ブライヤーさんは、颯爽と居酒屋を立ち去りました。来店時以上の注目を浴びる私達を、店内に残して。


(あんな風に言われたら、逃げられないわよね)


 観念しようと思いつつも、一つだけはっきりさせておきたかったので私はシラン様に尋ねました。


「……先触れを、出されていましたか?」

「いや? ただレギア商会ここは、貴族相手にも商いをしているから……バレちゃったかもね」

「…………」


 軽い調子で言われたので、嘘か本当か判断に困りますが――見つかってしまった今となっては、これ以上追求しても仕方ないですよね。


(この後、叔父さん(確定)と会うっていう現実は変わらない訳だから)


 そう結論付けると、私は食事を再開しました。料理とワインを残したまま、席を立つつもりはありません。

 そんな私に軽く目を見張ったかと思うと――次いで、面白がるように笑ってシラン様も周りの視線を物ともせず、ワインのグラスを傾けました。

 そして美味しく食事を頂いた後、私達は居酒屋を後にして隣のレギア商会へと向かいました。



 先に話を通してあったのか、従業員らしい男性に促されて私とシラン様は一階の奥の部屋へと通されました。


「やあ、よく来てくれたね」


 そんな私達――と言うか、敬語を使っていないので私を、窓際の席から立ち上がったブライヤーさんは笑顔で迎えてくれました。結果、スルーされたシラン様が気になって内心、ハラハラしていると。


「今、お茶を運ばせよう……シラン様も、同じものを? それとも、ワインになさいますか?」

「同じものを」

「では、二人はこちらのソファに」


 ブライヤーさんはシラン様に声をかけ、目線でここまで連れてきてくれた男性にお茶の準備を指示しました。そして私達は、窓際の机の前に並ぶ来客用らしいソファへと促されました。

 そして男性が一礼し、扉を閉めて立ち去ったところで――ブライヤーさんの様子が、一変しました。


「君は、ヴァガンス兄さんの娘だろう? 耳と……あと、親指も兄さんとそっくりだ。よければもっと、顔を見せてくれないだろうか」


 ソファに腰掛けようとした私の手を取って、ブライヤーさんがうっとりと呟いて顔を覗き込んできます。


(ブラコン? まさかと思いたかったけど、ブラコンなの?)


 先程までの紳士ぶりを放り投げられ、流石に顔や声には出しませんでしたが――内心で、私はすっかり引いていました。パーツが似ている場合、赤の他人と言うのは苦しいとは思うのですが、圧が強すぎて素直に父子だと名乗るのも躊躇します。

 そんな私の視線の先で、そこは父とは違う緑の瞳からハラハラと涙が零れました。


「ヴァガンス兄さんは、元気にしているだろうか……生きて、いるんだろうか?」


 泣きながら問いかけられて、私は今更ながらに気づきました。

 私が生まれて育つくらい、いえ、それ以前に母と出会った頃からなのでおよそ二十年近く、父は音信不通で姿をくらましていたことに。


「……生きていますし、元気ですよ」


 そう言って、私はそっと取られていた手を引き抜いてめがねを外しました。


「ヴァガンスの娘、ミナです。ご挨拶が遅れて、失礼致しました」

「……私こそ。ヴァガンス兄さんの弟で、君の叔父だ。改めて、よろしく頼む」


 父と同じ紫の瞳で見つめて名乗った私に、ブライヤーさんも――叔父も、涙に濡れた目を細めて応えてくれました。

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