明日の予定
エリカさんにもですが、父の弟・つまりは叔父にも自分の正体をバラすつもりはありません。
父は何でもないことのように話していましたが、行方不明になった長男を探さないと言うのは――悪く考えると見捨てられた、あるいは父が邪魔だった可能性がある訳で。
(そんな中「父の娘です」なんて名乗り出るなんて、それこそ薮蛇よね)
……しかし、一方で気にはなるのです。
前世は孤児で、現世では両親のみ(しかも、母親とは死別しています)。そんな時、父に自分以外の家族がいると聞いた時、私が感じたのは不思議な安心感でした。
(今生では、簡単に死ぬ気はないけど……でも、前と違って仮に私が死んでも、同じ血を引く人がまだいてくれるんだ)
前世では孤児な上、独り身で。そのまま事故で亡くなったので当然、子供もいなくて(いや、まあ、その為にはまず夫が必要なんですが)私の血は残りませんでしたが、現世ではそこは問題ないってことになります。
(つまりは、独身でもOKってことだもの)
そう、私は前世を思い出した六歳の時に「自立をしよう」と決意したんです。それなのに、何故か今は異国の王族に口説かれていますが――身分の差については理解していますし、そもそも推しキャラは見守るものだと思っています。
(昔は、生物にはハマらなかったんだけど……推しキャラが同じ次元にいるのって、良し悪しよね)
エリカさんに淹れて貰った食後の紅茶を飲みながら、私はこっそりとため息をつきました。そしてカップを受け皿に置いて、エリカさんに尋ねました。
「……明日、城下町の教会に行こうと思っています。エリカさんのお家は商家とお聞きしましたが、どんなお店なんですか?」
今までは、ルナリア様と一緒にディアスキアについて(歴史や地理や特産品など)を学んでいましたが、明日はお休みです。
いえ、実はルナリア様は貴族のご令嬢達とお茶会らしいですが、私は今回『は』不参加とさせて頂きました。
(とは言え、私のハーブグッズも期待されてるみたいだから……ハーブも調達しないとだし)
そんな訳で私がハーブ活用法を教えた教会に行き、ハーブ園(元々、薬に使われていたので規模の違いはありますが、教会にはハーブ園があるんですよね)のハーブを分けて頂けないか交渉するつもりです。
……そして、そのついでに。
可能ならお客として、無理そうなら遠くからだけでも父の生家(の可能性のあるエリカさんの店)を見に行こうと思ったのですが。
「明日、城下に行くんだって?」
ルナリア様と一緒に講義を終えた後、シラン様に眩いばかりの笑顔を向けられたのに私は内心、頭を抱えるのでした。




