…とは、思ってみたものの
……さて、決意したまでは良いけれど。
そこで私は、壁にぶち当たりました。
まずは前世と同じ翻訳家を考えましたが、そもそも本を読むのは富裕層か聖職者くらいです。そして、大抵の本はそんな上流階級が学ぶリアトリス語で書かれているので、翻訳家の出番はありません。
次に通訳はどうか、と考えましたが生まれ育った国を出るのも富裕層が多く。そういう方々は、既に馴染みのある面々に頼むので新規参入は難しそうです。
そんな中、私は女家庭教師という仕事について知りました。
今までは令嬢の花嫁修業として、寄宿舎学校に預けることが多かったのですが――最近では、自宅で学ばせるのに家庭教師を雇うようになり。何せ花嫁修行ですから、同性である女性が求められるようになりました。
これだ、と思いましたが……ただ、ですね。
(庶民じゃ、そもそも勉強が出来ない)
そう、さっきから私が『富裕層』と連呼していたアレです。結婚もですが、奨学金制度もない為、私ではスタートラインにすら立てないことに気づきました。
(勉強するのに、お金がかかったら本末転倒だし。諦めて、他の道を考えるか)
小説みたいに私が上流階級に生まれていれば、あるいは世の中自体を変えられたかもしれませんが、無い物ねだりをしても仕方ありません。
こうして、六歳にして初めての挫折を味わったのですが――そんな私に、思わぬ救いの手が差し延べられました。