明かされた、と思ったら更に謎が
(何っ!? 私達を守ったせいで!? そんな、そんな……っ)
頭の中でも焦りつつ、私はすぐにそんな場合ではないと思い直しました。そしてその場で正座をし、ひれ伏して頭を下げました。
つまりは、土下座です。皇族や王族、貴族は謝罪自体もあまりしないですが(言葉尻を捕られる危険性があるので、失敗や失言自体を避ける風潮があります)平民としては全く問題ありません。失敗をすれば謝りますし、その謝意を示す為にこうして土下座もします。
「申し訳ございません、シラン様!」
「……ミナ?」
「お母様からの授かり物を、壊してしまい……っ」
謝ったからと言って、壊れたものが元に戻る訳ではないですが――謝らないと言うのは、そもそも違います。
一瞬、駄目元で先ほどの魔導士様に直せるか聞けば良かったと思い、すぐにその考えを打ち消しました。王族と、他国の皇族を害しようとした犯人達を連行する以上に、優先することなどありません。それを、こんな私事で遮ってはいけません。
「ああ、気にしないでくれ。君達が無事で、本当に良かった……逆に、申し訳なかったな」
「えっ……?」
「……嘘なんだ。母から貰ったと言うのは……そのガーネットは、さっきの魔導士から守護と襲撃された合図となるように用意されたもので」
思わぬ告白と、自分の仮定が正しかったことの驚きに、顔を上げた私は眼鏡の奥の目を瞬かせました。
とは言え、形見でないから壊していいのかと言うと――元々が、そういうもの(他の者の手に渡らないよう使い切る為に)かもしれませんが、壊した私が判断することではないですし。
かと言って、シラン様に謝らせるのも違うと思ったので、少し考えて私は立ち上がりました。そして軽くスカートを持ち上げて片足を引き、もう片足の膝を曲げてカーテシーを行ないました。
「助けて頂き、ありがとうございました」
そう、先に土下座をしてしまったのでお礼を言うのを忘れていたのです。まあ、今、このタイミングで感謝を伝えたのは、お互い様とこの場を収めて貰おうという気持ちもありましたが。
……そんな下心を抱いた、罰が当たってしまったのでしょうか?
「全く……君って女は」
そんな言葉と共に、私はシラン様に抱き竦められてしまいました。




