そしてまた、急展開
魔導士の目の色を変更しました。
「さーてっ、無駄な抵抗はやめて貰おうか!」
そんな私達の耳に、不意に聞き慣れない声が飛び込んできました。
いえ、声だけではなく――明るい声の主は、ならず者達に襲撃を受けた私達の頭上に現れました。
年の頃はシラン様と同じ、二十歳前半くらいでしょうか。短い金髪に、淡い水色の瞳。線が細く、シラン様とはタイプが違いますが、並んでも遜色ないくらいの美形です。
けれど、その身を包む紺色の長衣。何より屈託のない笑顔に反して、その手でバチバチと弾ける雷が声の主の正体を告げています。
「……魔導士!?」
そう、それは貴族だけではなく襲撃者でも知っているような常識です。
けれど、物語のような力を見せる魔導士様にリーダー格らしい男はニヤリ、と口の端を上げました。そして立ち上がり、言い放ちました。
「たった一人で、何が出来るって言うんだ!?」
その言葉通り、襲撃者達は三十人くらい――一方こちらは、護衛の騎士達を合わせてもやっと十人くらいです。幸い、まだ誰も殺されてはいないようですが、無傷という訳ではなく。確かに、いくら魔法が使えてもこの人数差に勝てるのか、と不安に思ったところ。
「何って……こういうこと?」
「なっ!?」
「うわっ!」
魔導士様の声に応えるように、襲撃者達の足元から突然、植物の蔓がいくつも生えてきて縄のように全身に絡みつきます。勿論、悲鳴を上げた男達はそれを引きちぎろうとしますが、残念ながら果たせず逆にすっかり抵抗を封じられて地面に転がってしまいました。
(……触手プレイ?)
失礼。前世では成人済。更に少々、腐った知識もあったので、つい――いや、まあ、服を破られたりはしていません(実際、されたらそれはそれで困る)が、ちょっとそんな単語が浮かびました。
(そうじゃなくて。さっきの雷は、フェイクってことか)
そう思い、これで安心かと視線を巡らせたところで、私は軽く目を見張りました。
「フォーム、様?」
……同様に気づいて、声を上げたルナリア様と私の視線の先で。
襲撃者達に捕まっていた筈のフォーム様もまた、蔦に拘束されていたのでした。




