よし、自立しよう
私の名前は、ミナ。十七歳です。
名前から、異世界トリップを連想されたかもですが、ごめんなさい。私は前世が日本人で、中世ヨーロッパ風な異世界に転生しました。まあ、どちらも最近の小説(勉強や仕事の合間に読んでました)ではよくある話ですね。
とは言え、そんな小説とは違って私にはいわゆるチート能力はなく。
前世を思い出したのは、六歳の夏。母親が流行り病で、亡くなった時で――そのショックで熱を出し、数日寝込んだ私は、父親の腕の中で思ったんです。
(よし、自立しよう)
地(前世)の口調でそう思ったのは、そんな私の前世に関係があります。
実は私は、前世では施設育ちの孤児で。一人で生きていく為に大学卒業後、翻訳会社に登録して少しずつ翻訳家への道を歩んでいましたが――その矢先に事故に遭い、そのまま亡くなった訳です。
前世の記憶に目覚めましたが、私にはこれまでの記憶もありました。母親の記憶もあり、父親もいてくれる現在はむしろ恵まれていると思います。
……思いますけど、私の父親は郊外の小さな村で、小さな子に読み書きを教えていて。何でも若い頃にリアトリス皇国で学んでいましたが、人間関係でドロップアウトをし、故郷に戻ったと周りの大人達が噂していたのを聞きました。その時は前世を思い出す前でしたから、よく意味が解ってなかったんですけどね。
あと、この世界では結婚の際に持参金制度(花嫁側の家から花婿側に金銭や家畜を渡す)があるんですが、貧しい家だと幸せな結婚が難しいんです。こき使われるだけならまだしも、金持ちに文字通り『買われたり』するんです。
そんな訳で、私は決意しました。
前世同様、勉強してバリバリ働こう。この頼りないけど優しい父親に、迷惑をかけないように――いや、むしろ仕送り出来るように頑張ろう、と。