ツッコんだら負けでしょうか?
元々、今日城を出るつもりでしたので朝食はいつもの使用人達とではなく、部屋でこっそり済ませようと思っていました。
それが急遽、ルナリア様と旅立つ事になったので――その準備の為にと部屋に朝食と、ディアスキアに到着するまでの日程表が渡されました。
確かに、馬車で国外へと移動となるとしっかり食べておいた方がいいでしょう。朝食兼おやつとして用意しておいたビスケットは、ありがたく食後のおやつにさせて頂きました。
それから、日程表は――本来、供をつけることが出来ないので、ルナリア様にだけ伝えれば良いのですが。おそらく、イベリス様が気を利かせてくれたのでしょう。そんな訳でありがたく、目を通していたのですが。
「……えっ……?」
食器が片付けられ、一人きりになった部屋で私は思わず声を上げました。
ディアスキアまでは、馬車で移動――それは解ります。そして旅行ではないので、あちこちで物見遊山はせず。前世であったような車とは違い、馬車に乗りっ放しだとお尻が痛くなりますから暗くなる前に、宿泊地となる領主の館にお邪魔するのも解ります。
(でも、これって……)
三日後の夜、ちょうどリアトリス皇国とディアスキア国との国境となる森で野営をする事になっています。理由は、リアトリス皇国から持ち込んだ最後のもの――ドレスや装飾品をそこで外し、一晩、潔斎をする為とのことですが。
(……何だか、すっごくフラグ臭を感じるのは気のせい? 単なる私の、厨二病?)
戦も久しいので、王族や貴族が国外に嫁ぐこと自体が珍しく。習わしだと言われれば「はい、そうですか」としか言えません。元々がおめでたい話なのですから、不穏な『もしも』は考えないのかもしれません。
ただ、もし――もし、この婚姻に何か含みを持っている『誰か』がいるとしたら、森の中なんて色々と好都合なんじゃないでしょうか?
(いや、まあ、何かしたらリアトリスとディアスキアを敵に回すんだから。そこまでは、しない……と思いたいけど)
ただ、前世には「備えあれば憂い無し」という言葉があります。
武術の心得は皆無ですが、何もしないよりは――そう思った私は何かあった時、少しでも役立つようにと『あるもの』を用意しました。




