把握しました
ルナリアの年齢を変更したり(十六歳から十五歳に)誤字等を修正しました。
『緑の乙女』と言うのは、ハーブの使用方法を広めた私に、教会の皆様がつけた異名です。
乙女って、とは自分でも思うのですが、これでもまだマシなんですよ? そう、他の『癒しの聖女』や『香りの大賢者』よりは。
(おっと、脱線した……気にするのは、そこじゃない)
ルナリア様やイベリス様は、私が『そう』だと知っています。
けれど、それは皇女の家庭教師になる私を調べたからで――自分からはわざわざ名乗らないですし(使用方法自体は広まっていますしね)現に今までの雇い主は知りません。それをシラン様が知っているということは、同じように私を調べたということになります。
……そうなると、先程の中庭でのあれで私を見初めたというのが少々、いや、かなり苦しくなる訳で。
(調べられない、とは言い切れないけど……ストーカーじゃあるまいし、舞踏会までの時間でそこまではしないよね)
そうだとすると、まず前提が違ってきます。
つまり今日、会う前からシラン様は私を知っていたことになり。彼をモデルに物語を書いていることも知られているのかと思うとヒヤヒヤはしますが。
(怒ってるなら、そもそもディアスキアには連れていかないだろうし。ハーブの件も、知名度はあるけど使用法自体は独占していないから、やっぱり連れていく理由にはならないだろうし)
私を好きだということ自体、演技で私を利用しようとしているのでは――そうだとすると色々、納得出来ます。
ただ、その理由が解らずに内心、首を傾げているとフォーム様が困り顔(ナイスミドルなので、それはそれで素敵ですが)で言いました。
「……戯れではないと。本気で、身を固めるということかい?」
「はい」
「そうか……世の中、解らないものだね。色んな令嬢を紹介しても、首を縦に振らなかったお前が」
その後は声になりませんでしたが、多分「異国で、こんな平民の地味な女を選ぶとは」と言いたかったんでしょう。ええ、その気持ちはよく解ります。
そしてもう一つ、解ったこともあります。
(これか! 宰相からの見合いを断りたくて、私を利用しようとしてるのか!!)
おかげでスッキリしました。ありがとうございます、フォーム様。
心の中でお礼を言っていると、今まで黙っていたイベリス様が口を開きました。
「なるほど、シランどのの気持ちは解りました」
「では……」
「……ただ、そこまで急がなくても良いのでは?」
そう言って、イベリス様はシラン様とフォーム様に笑いかけました。




