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プロローグ
日本じゃないから、臣籍降下はない(長男以外は基本、家を継げないので必要ない)けれど。
庶子で宮廷の華、いや、美姫という華に舞い降りる蝶とくれば、光源氏を連想しませんか? え、私だけですか?
そんな乙女の妄想が具現化したような、むしろ完璧過ぎて恐縮しちゃうような『彼』がですよ?
「驚いた……天は、二物も三物も与えるのだな」
宵闇を思わせる、濃紺の髪。
琥珀色の瞳は、今は獲物を見つけた獣を思わせる金色に輝いている。
声すらイケメンな彼が、感心したようにそう言って、近眼の私にも見えるくらいの至近距離で見つめてくるなんて。
……って言うか、私のは単に眼鏡を外したギャップだけです! その言葉、そっくりそのまま貴方にお返ししますから!