プロローグ
魔術と科学。
この異なる法則の二つの技術が交錯するとどんな世界になるものか、それを考えながら始めました。
【神殺槍】
『《紋知槍》、スタンバイ』
『《雷双槍》、スタンバイ』
『《焔斧槍》、スタンバイ』
無線機から聞こえた『準備完了』の合図を聞き、僕はドイツ製の狙撃銃を握る手に力を込める。右手は銃把を固定し、左手は右肩に当てがった銃床を下から支える。周りから見れば、ライフルを抱き締めている様にも見えるかも知れない。
「《神殺槍》、スタンバイ」
僕は無線機に向かって呟き、スコープを覗く。このライフルの最大有効射程は一〇〇〇メートルだが今回の標的は四〇〇メートル先のビルの中なので、焦点調整を普段より遙か手前に設定してある。
このライフルとは、今、僕が握っているドイツ製の高性能な狙撃銃の事だ。元々、専用の工具を使って調整する様な複雑な代物なので、とっさの機転が利きにくいという危険を負った狙撃銃だ。5発しか装填できない弾倉といい、はっきり言って、突撃銃とは違って接近戦では何の役にも立たない。一応、20発装填できる弾倉も装備できるのだが、口径が大きすぎる為に使えないのだ。
「ゴー・クロール。レッツァ・カウントダウン」
四〇〇メートル先の高層ビルを見つめながら、僕が合図を送る。
「ファイブ、フォー、スリー、トゥー、ワン――」
スコープの中心点に、短機関銃を持って窓際に佇む男の右肩に照準を合わせ、
「――ゼロ」
重たい引き金を引いた。
突撃銃用にも使われるライフル弾が、音速の三倍以上の速度で四〇〇メートル分の大気を引き裂き、男の右肩を的確に貫いた。
【H&K PSG-1】
全 長:1230mm
重 量:7390g
口 径:7.62×51mm
装弾数:5×1/20×1
製造国:ドイツ
ドイツH&K社がG3をベースに開発した高性能狙撃銃。
精度の高い部品のみを使用し、自動式銃の難点である構造の複雑化による命中精度の低下を克服した。更にG3と同じ二〇連弾倉も使用可能である。軍用に開発された物はMAG90として使用されている。
だが、狙撃銃の最高峰と謳われる反面、精度の高い部品を使って製造されている為、極めて高価である。