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第二の手紙 ~最高の解決屋が、令嬢の不当な婚約破棄を回避するが……?~  作者: 藤村 としゆき


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9/12

その9・刺客

 

 大きな音をたててドアが開き、大柄な男が立ってロックスを睨んでいた。


「あんたがロックス先生かい?」


 男は、身体に見合う大声で、威嚇するように言った。


「そうだが、君は?」


 侵入者とは対照的に、ロックスは呑気な表情のままだ。


「あんた、手紙を持っているだろう。それをよこしな」


「もう少し、分かりやすく言ってもらえるかね?」


 ロックスは微笑んだ。


「とぼける気か? ……なんだ、そこにあるじゃねえか」


 男はテーブルの上に目を向けると、1歩進んで手を伸ばそうとした。


「おっと、こいつは大事な証拠品だ」


「うるせえ!」


 男はいきなり殴りかかってきたが、ロックスは華麗に身をかわした。男は振り向くと、両拳を上げて構えた。


「まあ落ち着いて、コーヒーはいかがかな?」


 ロックスがコーヒーポットを投げつけると、熱いコーヒーを浴び、男は絶叫してポットを放り投げた。


 その瞬間、ロックスの拳が男の顔面にヒットし、男は床に崩れ落ちた。


 ロックスは、倒れた男にかがみこんだ。


「さあ、でくのぼう。言うんだ。誰に頼まれた?」


「だ、誰がお前なんかに言うもんかよ……」


「ご立派だな。チンピラにしては。じゃあ、当ててやろう。お前に命令したのは、ランバートという男だろう?」


 男の表情が変わった。


「どうやら図星だったようだな」


「ど、どうして分かったんだ? あんた、まるで魔法使いだ」


「まぬけなやつだ。私は心当たりを順に言うつもりだったんだ。お前は、嘘をつけないタイプのようだな」


 男は、アゴをさすりながら起き上がった。


「さあ、さっさと出て行け。雇い主に報告するんだ。ドジ踏みましたとな」


 男は、最初の横柄な態度は消し飛び、背中を曲げ、逃げるように出口に向かった。


「待て」


 ロックスに呼び止められ、男はびくりと振り向いた。


「これを持っていけ。やけどの薬だ」


 ロックスが薬の小瓶を放り投げると、男はそれを受け取り、ネズミのように逃げだした。


「……まったく。あの男のお陰でコーヒーが上着にかかってしまったよ」


「替えを用意しますわ。で、何だったんですか、先生。あの男は?」


 シェリーが、床にこぼれたコーヒーを拭きながら言った。


「さっき言った、ランバートという男は、アルバート卿の仲介者なのさ。前にジャックという男がドーレスの家に忍び込んだろう? あれも、ランバートの指示だ」


「どういうことです? 先生」


 シェリーが首を傾げた。


「つまり、ジャックもさっきの男も、アルバート卿の命令で動いているということだ。そして、おそらくジャックはドーレスから手紙を盗もうとして失敗し、さっきの男は僕から手紙を盗もうとして失敗した」


「あ、先生。ということは……」


「そうだ。ドーレスから奪った手紙と、エレナ嬢から預かった手紙の筆跡は、鑑定するまでもなく同一ということだな。アルバート卿が僕に刺客を差し向けたということは、その事実を白状しているようなものさ」


 ロックスは手紙の筆跡鑑定の作業に戻った。


「……やはり、一致する。この卑猥な内容の手紙は、アルバート卿の筆跡に違いない。不貞の証拠だ。あとはこれを、コールドストーン卿に届けるだけさ」


 そう言いながら、ロックスは身支度をした。


「シェリー、馬車を呼び止めてくれ」


「はい、先生」


 シェリーは外に出て、しばらくすると戻ってきた。


「先生、今ちょっと馬車が混んでて。あと30分くらいお待ちください」


「30分か。……ちょうどいい。書いておきたい手紙がある」


 ──30分後、馬車が来た。シェリーが用意した上着に替えると、不貞の手紙を紙で包み、懐に入れる。


「じゃあ、シェリー、僕はコールドストーン邸に行ってくる」


「先生、気をつけて!」


 シェリーの言葉を背中で聞きながら、待機している馬車に乗るなり御者に言った。


「コールドストーン邸まで頼む」


 ──馬車に揺られて石畳の音を聞いていると、ロックスは、後ろにもう1台の馬車がいることに気づいた。


「御者くん、もう少し急いでくれ」


 御者が鞭を打った。馬車の揺れが激しくなる。しかし、それよりも早く、後ろの馬車がスピードを上げ、ロックスの馬車の横に並んだ。


 馬車には、覆面をした3、4人の男が乗っている。そのうちの1人が、ロックスの馬車に飛び乗ってきた。


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