好きになった相手は、倒すべき敵の魔法使いでした
今夜、私は敵を倒す。たとえそれが、初めて好きになった人でも。
私の名前は白鳥ミサキ。16歳の高校1年生。
普通の女子高生......に見えるけど、実はこの世界を守る魔法少女だ。
光の魔法少女「ルミナス」。
闇の魔法使いと戦うのが私の使命。
でも、今の私には、もう一つ悩みがある。
そう、好きな人ができた。
入学式の日。
教室で席に座っていると、隣のクラスから一人の男の子が通りかかった。
黒髪で、整った顔立ち。
でも、どこかミステリアスな雰囲気。
その人が、私の方を見た。
一瞬、目が合った。
その一瞬で私の心臓は急に落ち着かなくなってしまった。
「......」
彼は何も言わずに通り過ぎた。
でも、その一瞬で、私は恋に落ちた。
それから、私は彼のことを調べるようになった。
名前は紫雲院トウヤ。
2年生で、成績優秀。
でも友達は少なく、いつも一人でいる。
私は、毎日トウヤ先輩のことが気になって仕方なかった。
ある日の放課後、図書館で本を読んでると、隣の席に誰かが座った。
顔を上げると、トウヤ先輩だった。
「あ...」
思わず声を出してしまった。
トウヤ先輩が私を見た。
「...静かにしてくれ」
冷たい声。
「ご、ごめんなさい...」
私は慌てて本に目を戻した。
でも、心臓がバクバク鳴ってる。
トウヤ先輩が、すぐ隣にいる。
その時、トウヤ先輩が小さく呟いた。
「お前...」
「え?」
「いや、何でもない」
トウヤ先輩が本を閉じて立ち上がった。
「じゃあな」
そして去って行った。
私は呆然としてた。
何だったんだろう...。
でもトウヤ先輩が私に話しかけてくれた。
短いけれど、とても嬉しかった。
その夜、私は魔法少女として街をパトロールしていた。
「闇の気配...」
私のペンダントが反応している。
近くに闇の魔法使いがいる。
私は建物の陰に隠れ、変身した。
「光よ、私に力を!ルミナス・トランスフォーム!」
光に包まれて、ピンクと白の魔法少女の姿になる。
私は闇の気配がする方へ走った。
公園に着くと、そこに黒いローブを着た人物がいた。
「あなた、闇の魔法使いね!」
私が叫ぶと、相手が振り返った。
黒いマスクで顔は見えない。
「...光の魔法少女か」
低い声。
男性だ。
「今日こそあなたを倒すわ!」
私は光の矢を放った。
でも、相手は影に溶けて消えた。
「な...」
背後から声がした。
「遅い」
振り返ると、闇の魔法使いが立っていた。
闇の刃が私に向かってくる。
私は咄嗟にバリアで防いだ。
「くっ...」
力が拮抗してる。
「...強いな」
闇の魔法使いが呟いた。
「あなたも...」
私たちは睨み合った。
でも、その時。
遠くでサイレンの音がした。
「...今日は引く」
闇の魔法使いが影に消えた。
私も変身を解いて、その場を離れた。
家に帰って、ベッドに倒れ込んだ。
「あの闇の魔法使い...強かったな…」
でも、何か違和感があった。
声が...どこかで聞いたような。
いや、まさか。何かの勘違いでしょ。
私は首を振った。きっとただの考えすぎだ。
翌日、学校でトウヤ先輩を見かけた。
廊下ですれ違う時、また目が合った。
「...」
トウヤ先輩が何か言いかけて、でも黙った。
そして通り過ぎた。
何だろう。
最近、先輩の目が気になる。
何か、言いたそうな...。
放課後、私は屋上にいた。
一人で空を見てた。
「ここにいたのか」
声がして、振り返ると、トウヤ先輩が立ってた。
「せ、先輩...!」
「お前を探してた」
「私を...?」
トウヤ先輩が近づいてきた。
「白鳥ミサキ。お前に聞きたいことがある」
「は、はい...」
緊張する。もしかして…告白!?
トウヤ先輩が真剣な目で私を見た。
「お前...魔法少女か?」
まったく予想想していなかった質問に私の心臓が止まった。
「え...」
「昨夜の公園での戦闘。お前だったんだろう」
「なんで...」
「声だ。お前の声、覚えてる」
トウヤ先輩が一歩近づいた。
「俺がお前が倒そうとしている闇の魔法使いだ」
私の世界が止まった。何も考えられない。
トウヤ先輩が倒すべき闇の魔法使い…!?
「嘘...」
「本当だ」
トウヤ先輩が手を伸ばすと、影が集まった。
「あなたが...」
私が好きになった人が。
世界のために倒すべき敵だった。
「お前も、認めるんだな」
「......」
私は何も言えなかった。
トウヤ先輩が悲しそうな目をした。
「やはりな」
「先輩...」
「俺たちは、敵同士だ」
トウヤ先輩が背を向けた。
「でも、ここでは戦わない」
「え...」
「学校は中立地帯だ。今夜、いつもの公園で」
そう言って、トウヤ先輩は去って行った。
私は一人、屋上に残された。
一人になると涙が止まらなかった。
どうして。
どうして、私が好きになった人が...。
その夜、私は公園に向かった。
早めに変身して、待っていた。
そして、トウヤ先輩が現れた。
闇の魔法使いの姿で。
「来たか」
「...はい」
私たちは向かい合った。
「戦うのか?」
トウヤ先輩が聞いた。
「それが...使命です」
「そうか」
トウヤ先輩が闇の刃を出した。
私も光の矢を構えた。
でも。
撃てなかった。
「...どうした」
「撃てません...」
手が震えて、涙が出た。
「あなたを倒すなんて...できない...」
トウヤ先輩の手が止まった。
「俺も、だ」
「え...」
「俺も、お前を倒せない」
トウヤ先輩が闇の刃を消した。
「白鳥ミサキ。俺は...」
トウヤ先輩が一歩近づいた。
「お前のことが...好きだ」
「先輩...!」
「でも、俺たちは敵同士だ」
トウヤ先輩が苦しそうな顔をした。
「こんなの...おかしいだろ」
私も泣いた。
「私も...先輩のこと、好きです」
「ミサキ...」
私たちは抱き合った。
敵同士なのに。
戦わなきゃいけないのに。
でも、離れたくなかった。
それから、私たちは秘密の関係になった。
学校では普通に話す。
でも、夜は戦わなければならない。
でも、本気では戦えない。
いつも、途中で止めてしまう。
「このままじゃ、ダメだ」
ある日、トウヤ先輩が言った。
「俺たちの組織が、動き出す」
「動き出すって...」
「光の魔法少女を一掃する作戦が始まる」
私の顔が青ざめた。
「そんな...」
「俺には止められない」
トウヤ先輩が悔しそうに拳を握った。
「お前の組織は?」
「私たちも...闇の魔法使いを倒す作戦があります」
私たちは絶望した。
「どうすればいいんだ...」
トウヤ先輩が私を抱きしめた。
「お前を失いたくない」
「私も...トウヤ先輩を倒すなんてできません…」
その時、私の変身ペンダントが光った。
「これは...!?」
ペンダントからメッセージが浮かび上がっている。
『真実を知りたければ、古の神殿へ』
「古の神殿...?俺も、同じメッセージを受け取った」
私たちは顔を見合わせた。
「行こう」
二人で、古の神殿に向かうことになった。
ペンダントが指す方向に向かう。
神殿は、街の外れの森の中にあった。
古びた石造りの建物。
中に入ると、一つの石碑があった。
『光と闇は、世界の両輪』
「両輪...?」
私が呟くと、石碑が光った。
そして、映像が浮かび上がった。
老人の姿。
『光の魔法少女と闇の魔法使いよ。よく来た』
「あなたは...」
『私は、この世界を創った者だ』
老人が語り始めた。
『光と闇は、本来殺しあう敵ではない』
「え...」
『世界にはバランスが必要だ。光だけでも、闇だけでもどちらかのみでは機能しない』
『両方があって、初めて世界は成り立つ』
トウヤ先輩が聞いた。
「では、なぜ俺たちは戦っている?」
『それは、君たちのリーダーたちが、真実を隠したからだ』
「隠した...?」
『彼らは、力を独占したかった』
『だから、互いを敵だと教え、戦わせている』
私は愕然とした。
「じゃあ、今まで私たちが戦ってきたのは...」
『全くの無意味だった』
老人が悲しそうに言った。
『だが、君たちは違う』
「違う?」
『君たちは、愛し合った』
『光と闇が手を取り合えば、真の美しい世界が生まれる』
老人が微笑んだ。
『君たちなら、この世界を救える』
映像が消えた。
私とトウヤ先輩は、顔を見合わせた。
「ミサキ」
「はい」
「俺たちで、この世界を変えよう」
トウヤ先輩が手を伸ばした。
私はその手を取った。
「はい!」
私たちは、それぞれの組織に真実を伝えに行った。
でも、リーダーたちは聞く耳を持たなかった。
「裏切り者め!」
光の女王が私に攻撃してきた。
「女王様、違うんです!」
「黙れ!闇の魔法使いに惑わされたな!」
トウヤ先輩も、闇の王に攻撃されていた。
「貴様、光の魔法少女に寝返ったか!」
「違う!真実を聞いてくれ!」
でも、誰も聞かなかった。
私たちは、両陣営から迫害されてしまった。
「くっ...」
私とトウヤ先輩は傷だらけになっていた。
「ミサキ!」
「トウヤ先輩!」
私たちは背中合わせで戦った。
「このままじゃ...」
「ああ、まずい」
その時、私のペンダントとトウヤ先輩のリングが光った。
『光と闇、手を繋げ』
声が聞こえた。
私たちはその声の通りに手を繋いだ。
すると、眩い光が溢れた。
光と闇が混ざり合って、新しい力が生まれた。
「これは...」
「黄昏の力だ」
トウヤ先輩が言った。
「光と闇の調和。真のバランス」
私たちは、その力を解放した。
黄昏の光が、全員を包んだ。
攻撃が止まった。
そして、みんなが我に返っていた。
「何を...していた...」
光の女王が呟いた。
闇の王も、困惑していた。
「これは...真実の力か」
黄昏の光が、全員に真実を見せた。
光と闇は敵ではない。
共存すべき存在だと。
戦いは終わった。
それから一ヶ月。
光と闇の陣営は、和平を結んだ。
もう今までのように戦う必要はない。
私とトウヤ先輩は、両陣営の架け橋になった。
そして、学校でも、堂々と一緒にいられるようになった。
「ミサキ」
トウヤ先輩が私の手を取った。
「なんですか?」
「お前と出会えて、良かった」
「私も...です」
私たちは笑い合った。
この前までは敵同士だった。
でも、恋をした。
その恋が、世界を変えた。
「これから、一緒に新しい世界を作ろう」
「はい!」
私たちは手を繋いで、未来へ歩き出した。
全ての人が手を取り合う、新しい世界へ。
【完】




