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好きになった相手は、倒すべき敵の魔法使いでした

作者: 桜木ひより
掲載日:2025/10/13

今夜、私は敵を倒す。たとえそれが、初めて好きになった人でも。




私の名前は白鳥ミサキ。16歳の高校1年生。

普通の女子高生......に見えるけど、実はこの世界を守る魔法少女だ。


光の魔法少女「ルミナス」。

闇の魔法使いと戦うのが私の使命。


でも、今の私には、もう一つ悩みがある。

そう、好きな人ができた。


入学式の日。

教室で席に座っていると、隣のクラスから一人の男の子が通りかかった。


黒髪で、整った顔立ち。

でも、どこかミステリアスな雰囲気。


その人が、私の方を見た。

一瞬、目が合った。


その一瞬で私の心臓は急に落ち着かなくなってしまった。


「......」

彼は何も言わずに通り過ぎた。


でも、その一瞬で、私は恋に落ちた。


それから、私は彼のことを調べるようになった。


名前は紫雲院トウヤ。

2年生で、成績優秀。

でも友達は少なく、いつも一人でいる。


私は、毎日トウヤ先輩のことが気になって仕方なかった。


ある日の放課後、図書館で本を読んでると、隣の席に誰かが座った。

顔を上げると、トウヤ先輩だった。


「あ...」

思わず声を出してしまった。


トウヤ先輩が私を見た。


「...静かにしてくれ」

冷たい声。


「ご、ごめんなさい...」


私は慌てて本に目を戻した。

でも、心臓がバクバク鳴ってる。

トウヤ先輩が、すぐ隣にいる。


その時、トウヤ先輩が小さく呟いた。


「お前...」


「え?」


「いや、何でもない」

トウヤ先輩が本を閉じて立ち上がった。


「じゃあな」

そして去って行った。


私は呆然としてた。

何だったんだろう...。


でもトウヤ先輩が私に話しかけてくれた。

短いけれど、とても嬉しかった。


その夜、私は魔法少女として街をパトロールしていた。


「闇の気配...」


私のペンダントが反応している。

近くに闇の魔法使いがいる。


私は建物の陰に隠れ、変身した。


「光よ、私に力を!ルミナス・トランスフォーム!」


光に包まれて、ピンクと白の魔法少女の姿になる。

私は闇の気配がする方へ走った。


公園に着くと、そこに黒いローブを着た人物がいた。


「あなた、闇の魔法使いね!」

私が叫ぶと、相手が振り返った。


黒いマスクで顔は見えない。


「...光の魔法少女か」


低い声。

男性だ。


「今日こそあなたを倒すわ!」

私は光の矢を放った。


でも、相手は影に溶けて消えた。


「な...」


背後から声がした。


「遅い」


振り返ると、闇の魔法使いが立っていた。


闇の刃が私に向かってくる。

私は咄嗟にバリアで防いだ。


「くっ...」

力が拮抗してる。


「...強いな」

闇の魔法使いが呟いた。


「あなたも...」

私たちは睨み合った。


でも、その時。

遠くでサイレンの音がした。


「...今日は引く」


闇の魔法使いが影に消えた。

私も変身を解いて、その場を離れた。


家に帰って、ベッドに倒れ込んだ。


「あの闇の魔法使い...強かったな…」


でも、何か違和感があった。

声が...どこかで聞いたような。


いや、まさか。何かの勘違いでしょ。


私は首を振った。きっとただの考えすぎだ。



翌日、学校でトウヤ先輩を見かけた。

廊下ですれ違う時、また目が合った。


「...」


トウヤ先輩が何か言いかけて、でも黙った。

そして通り過ぎた。


何だろう。

最近、先輩の目が気になる。


何か、言いたそうな...。


放課後、私は屋上にいた。

一人で空を見てた。


「ここにいたのか」

声がして、振り返ると、トウヤ先輩が立ってた。


「せ、先輩...!」


「お前を探してた」


「私を...?」


トウヤ先輩が近づいてきた。


「白鳥ミサキ。お前に聞きたいことがある」


「は、はい...」

緊張する。もしかして…告白!?


トウヤ先輩が真剣な目で私を見た。


「お前...魔法少女か?」


まったく予想想していなかった質問に私の心臓が止まった。


「え...」


「昨夜の公園での戦闘。お前だったんだろう」


「なんで...」


「声だ。お前の声、覚えてる」

トウヤ先輩が一歩近づいた。


「俺がお前が倒そうとしている闇の魔法使いだ」


私の世界が止まった。何も考えられない。

トウヤ先輩が倒すべき闇の魔法使い…!?


「嘘...」


「本当だ」

トウヤ先輩が手を伸ばすと、影が集まった。


「あなたが...」


私が好きになった人が。

世界のために倒すべき敵だった。


「お前も、認めるんだな」


「......」

私は何も言えなかった。


トウヤ先輩が悲しそうな目をした。


「やはりな」


「先輩...」


「俺たちは、敵同士だ」


トウヤ先輩が背を向けた。


「でも、ここでは戦わない」


「え...」


「学校は中立地帯だ。今夜、いつもの公園で」

そう言って、トウヤ先輩は去って行った。


私は一人、屋上に残された。

一人になると涙が止まらなかった。


どうして。

どうして、私が好きになった人が...。


その夜、私は公園に向かった。

早めに変身して、待っていた。


そして、トウヤ先輩が現れた。

闇の魔法使いの姿で。


「来たか」


「...はい」

私たちは向かい合った。


「戦うのか?」

トウヤ先輩が聞いた。


「それが...使命です」


「そうか」

トウヤ先輩が闇の刃を出した。


私も光の矢を構えた。


でも。

撃てなかった。


「...どうした」


「撃てません...」


手が震えて、涙が出た。


「あなたを倒すなんて...できない...」

トウヤ先輩の手が止まった。


「俺も、だ」


「え...」


「俺も、お前を倒せない」

トウヤ先輩が闇の刃を消した。


「白鳥ミサキ。俺は...」

トウヤ先輩が一歩近づいた。


「お前のことが...好きだ」


「先輩...!」


「でも、俺たちは敵同士だ」

トウヤ先輩が苦しそうな顔をした。


「こんなの...おかしいだろ」

私も泣いた。


「私も...先輩のこと、好きです」


「ミサキ...」

私たちは抱き合った。


敵同士なのに。

戦わなきゃいけないのに。


でも、離れたくなかった。



それから、私たちは秘密の関係になった。


学校では普通に話す。

でも、夜は戦わなければならない。


でも、本気では戦えない。

いつも、途中で止めてしまう。


「このままじゃ、ダメだ」

ある日、トウヤ先輩が言った。


「俺たちの組織が、動き出す」


「動き出すって...」


「光の魔法少女を一掃する作戦が始まる」

私の顔が青ざめた。


「そんな...」


「俺には止められない」

トウヤ先輩が悔しそうに拳を握った。


「お前の組織は?」


「私たちも...闇の魔法使いを倒す作戦があります」

私たちは絶望した。


「どうすればいいんだ...」

トウヤ先輩が私を抱きしめた。


「お前を失いたくない」


「私も...トウヤ先輩を倒すなんてできません…」


その時、私の変身ペンダントが光った。


「これは...!?」


ペンダントからメッセージが浮かび上がっている。

『真実を知りたければ、古の神殿へ』


「古の神殿...?俺も、同じメッセージを受け取った」


私たちは顔を見合わせた。


「行こう」

二人で、古の神殿に向かうことになった。



ペンダントが指す方向に向かう。

神殿は、街の外れの森の中にあった。


古びた石造りの建物。

中に入ると、一つの石碑があった。


『光と闇は、世界の両輪』


「両輪...?」


私が呟くと、石碑が光った。

そして、映像が浮かび上がった。


老人の姿。


『光の魔法少女と闇の魔法使いよ。よく来た』


「あなたは...」


『私は、この世界を創った者だ』

老人が語り始めた。


『光と闇は、本来殺しあう敵ではない』


「え...」


『世界にはバランスが必要だ。光だけでも、闇だけでもどちらかのみでは機能しない』

『両方があって、初めて世界は成り立つ』


トウヤ先輩が聞いた。


「では、なぜ俺たちは戦っている?」


『それは、君たちのリーダーたちが、真実を隠したからだ』


「隠した...?」


『彼らは、力を独占したかった』


『だから、互いを敵だと教え、戦わせている』


私は愕然とした。


「じゃあ、今まで私たちが戦ってきたのは...」


『全くの無意味だった』

老人が悲しそうに言った。


『だが、君たちは違う』


「違う?」


『君たちは、愛し合った』


『光と闇が手を取り合えば、真の美しい世界が生まれる』

老人が微笑んだ。


『君たちなら、この世界を救える』

映像が消えた。


私とトウヤ先輩は、顔を見合わせた。


「ミサキ」


「はい」


「俺たちで、この世界を変えよう」


トウヤ先輩が手を伸ばした。

私はその手を取った。


「はい!」




私たちは、それぞれの組織に真実を伝えに行った。

でも、リーダーたちは聞く耳を持たなかった。


「裏切り者め!」

光の女王が私に攻撃してきた。


「女王様、違うんです!」


「黙れ!闇の魔法使いに惑わされたな!」


トウヤ先輩も、闇の王に攻撃されていた。

「貴様、光の魔法少女に寝返ったか!」


「違う!真実を聞いてくれ!」


でも、誰も聞かなかった。

私たちは、両陣営から迫害されてしまった。


「くっ...」


私とトウヤ先輩は傷だらけになっていた。


「ミサキ!」


「トウヤ先輩!」


私たちは背中合わせで戦った。


「このままじゃ...」


「ああ、まずい」


その時、私のペンダントとトウヤ先輩のリングが光った。


『光と闇、手を繋げ』


声が聞こえた。


私たちはその声の通りに手を繋いだ。


すると、眩い光が溢れた。

光と闇が混ざり合って、新しい力が生まれた。


「これは...」


「黄昏の力だ」

トウヤ先輩が言った。


「光と闇の調和。真のバランス」


私たちは、その力を解放した。

黄昏の光が、全員を包んだ。


攻撃が止まった。

そして、みんなが我に返っていた。


「何を...していた...」

光の女王が呟いた。


闇の王も、困惑していた。


「これは...真実の力か」


黄昏の光が、全員に真実を見せた。


光と闇は敵ではない。

共存すべき存在だと。


戦いは終わった。





それから一ヶ月。


光と闇の陣営は、和平を結んだ。


もう今までのように戦う必要はない。


私とトウヤ先輩は、両陣営の架け橋になった。

そして、学校でも、堂々と一緒にいられるようになった。


「ミサキ」

トウヤ先輩が私の手を取った。


「なんですか?」


「お前と出会えて、良かった」


「私も...です」

私たちは笑い合った。


この前までは敵同士だった。


でも、恋をした。

その恋が、世界を変えた。


「これから、一緒に新しい世界を作ろう」


「はい!」


私たちは手を繋いで、未来へ歩き出した。

全ての人が手を取り合う、新しい世界へ。


【完】

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