2.
この短編は3話で完結します。
“なじみ水” の威力は説明書きの通りだった。
どんな食材を組み合わせても、煮る料理はもちろん、焼いたり揚げたりする料理でも、仕込みのときにちょっと使うだけで風味が調和した。
この、どんな食材の組み合わせても、というところがポイントだ。
例えば、豚レバーと、鯛のアラとミカンの皮とブロッコリの芯と、玉ねぎの根っこを使ったシチューなんて、これ食えんの? ていう組み合わせだけど仕上がりは抜群にきれいだし、味ときたら未体験のおいしさだった。
リマは自信をもって優斗をクリスマスパーティーに招待した。
今日のメインは、例のシチューとウルトラメンチカツだ。ちなみにウルトラメンチっていうのは、丸ごとのイワシとナスの古漬けとコーヒーゼリーと、あと鶏皮。そこに例の水を少量加えてフードプロセッサーでぐだぐだにしたのを揚げた料理だ。
ソースは塩とインスタントコーヒーと黒酢に、ぬか床を少し混ぜてあの水で溶いたのをレンジでチンした。
優斗の反応は予想以上だった。
「リマ、おまえこんなに料理上手かったっけ、見直したわ、やっぱ女なんだな、おまえ」
リマは胸が熱くなった。『やっぱ女なんだな、おまえ』っていうことばが、匂い立つカラメルソースみたいに甘く胸を満たしていく。
やったぁ、作戦大成功!
「優斗、こんどサッカーの試合ある日、教えてよ、お弁当作ってあげる」
「うそ、試合の日にこんなの食えるなんて俺、シアワセだー」
よかった。これで練習試合のたびに応援に行ける。
それに毎回毎回、別の学校の生徒がお弁当作って応援にきてたら周りだって認めるし、そしたら自然に付き合うって流れに! うふ♡




