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異世界では小さいねと可愛がられてます  作者: とりとり


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王家の血族

時は少し戻って、王城ではーーーー


美しい花が咲き誇る庭園の一角、ガゼボではヘスティア王妃とアーノルド王子が向き合っていた。


美しい茶器に香り高い紅茶、色鮮やかなケーキやお菓子。

煌びやかな2人が佇むお茶の時間は、まるで絵画のようだった。


深く紅色のドレスに結い上げた金の髪。ヘスティア王妃はアーノルドにも勝る美貌の持ち主だった。

ニッコリと威厳のある優しい微笑みを見せる王妃。


「アーノルド。砦での会議は上手くいったかしら?」


あ、コレめちゃくちゃ怒ってるやつ。

アーノルドは母の怒りを瞬時に察して、誤魔化すのを諦めた。


「ひかり嬢はもう諦めました。あれは付け入る隙などありませんよ。

会議は…ガルドがあまりにも変わりすぎてて、知識どころじゃなかったですよ」


アーノルドが肩をすくめてやる気をなくした素振りを見せると、ヘスティアは目を瞬いた。


「変わったとは?」

「ひかり嬢の些細な言動に振り回されて…いや、錯乱に近いかな」

「あらまあ」


懐かしい記憶が思い浮かぶ。

学生時代のエッセン卿。友人の辺境伯夫人。散々彼女に対して彼はヘタレて、周りを巻き込んで大騒ぎだった。


「ふふふっ、あらあら。血は争えないわねえ」

「あの姿を見ながら会議を進めるのは無理ですよ」


アーノルドはゲンナリした表情で呟く。

真っ直ぐで真面目で厳しさの中にも優しさがあるガル兄が、ひたすらひかりから嫌われるのに怯えて好意に甘えて喜ぶ姿は見ていられなかった。誰だよアレ。


「ひかり嬢は、あなたの言葉に随分怒ったのねえ」

「あー…もうちゃんと謝罪して許しを得ましたよ」

「残念だけど、辺境伯夫人にピッタリねえ」

「? そうですか?」

「あら、気付いてないの?」

「まあ、怒り方がある意味似た者同士かなとは思いましたけど」

「ふふ、そうね」


ひかりは、このままなら王家に知識を渡さないと宣戦布告をした。


アーノルドが迷惑だからじゃない。

ーーーーガルドを軽んじたから。


辺境伯一族の、伴侶を守るなら王族とて牙を剥く性質そのものだ。

あの一族の愛情を、彼女はなんてことなく受け取るだろう。

友人の辺境伯夫人とひかりはそっくりだ。

あの一族は自分たちに似た気質の人間に惹かれるのかしら?


「もう男性は何も手が出せないわね。私が動きます」

「どうやってです?」

「信頼を得るだけですよ。女性同士の繋がりは、恋愛が絡まなければ男性が手を出せないほど、とても強固になるのよ?知らないなんて、アルはまだまだねえ」


くすりと母の顔をして、息子を揶揄った。

子供扱いをされて、ムウッとアーノルドは拗ねた。


「恋愛で簡単に壊れるなら、脆いのでは?」

「馬鹿ねえ。男と女は生きる道が違うのよ。だからこそ、見誤れば痛い目を見る。今回のようにね」


王家へ宣戦布告するほどの恋心。

その激しさがわからないなんて、まだ幼いわね。

母は苦笑した。


「アルも誰かを本気で好きになればわかるわ」

「……え…アレと同じになるの嫌なんですけど」


アーノルドの表情が明らかに悪くなった。

ヘスティアは、目を瞬き首を傾げた。

思い詰めたようにアーノルドは王妃を見る。


「母上、血族の特徴が王家と辺境伯は似てるって…違いますよね?」

「…誰から聞いたの?」

「侍女のレイゼンが、とても王家に近いと」


アルに教えるのはまだ少し早いと思ったけれど、レイゼンが伝えたのならば時期がきたのかもしれないわね。


ヘスティアは、一度目を閉じると深く息を吸った。

血族の特徴は、本来気軽に言えるものではない。


「辺境伯一族の異常な愛情は、伴侶を「自分の命」として見ているのよ。戦からどんなに身体がボロボロでも家に帰るの。命がそこにあるから。

自分の命に手を出したら容赦しないのは当たり前でしょう?だから王家にも牙を剥く。

伴侶の些細な行動に錯乱するのも、命を失う恐怖からよ。戦を担う辺境伯は言葉通り、生死に関わるの」


アーノルドは息を飲む。

ただの性質にしては重すぎた。


「では、王族の特徴は…?」

「…王族の伴侶は「象徴」よ。いかに相手を幸福にするかを考える。そこに自分の命など厭わない。

戦が起きた時、王族は自分の命を投げ出しても伴侶を守る。伴侶さえ生き延びれば、象徴は続くから。まるで、一つの国を守るが如く動くのよ」

「父上もそうなのですか…?」

「そうよ。私の幸せが自身の幸せ。生かす為に命を捧げてしまう」


アーノルドは、なんとも言えない顔をした。

それって、ただの溺愛だよね?


「えーと…父上は母上がとても好きって話です?」

「そうよ。恥ずかしい話でしょう?話す身にもなってほしいわ」


ヘスティアはうんざりした顔をした。

有事には、勝手に命を捧げるなんてふざけるなと言いたい血族の特徴だが、通常時はただの惚気話になってしまう。辺境伯も同じこと。平和な時は溺愛が酷い一族にしか見えないのだ。


「え?結局、俺も好きな人が出来たら頭がおかしくなるってこと?」

「大丈夫よ。辺境伯のようにヘタれることはないわ。不屈の精神で溺愛するだけ」

「それ嫌がられてません!?」

「大丈夫大丈夫」

「なんか適当!!」


全然安心できる話で終わらなかった!

くっそ、父上に聞いてみる…のは藪蛇になりそうだ。

ああ!逃げ道がない!!


「嫌だああ!ああはなりたくない!」

「大丈夫大丈夫」


ヘスティアは適当に相槌を打ちながら、上品に紅茶で喉を潤した。


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