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異世界では小さいねと可愛がられてます  作者: とりとり


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きらびやかな世界

ワイワイと寮内の談話室では、華やかなドレスを着た団員たちが身支度を整えていた。

鏡やメイク道具が置かれていて、ヘアセットもできる。

レンタル用のドレスもズラリと並び、みんなで「どれが似合うか」を話し合っていた。


「わあ。すごい」


ひかりは、いつもの談話室とは全く違う様子に驚いていた。


今夜は貴族の夜会とは違い、平民向けのパーティだ。


男性団員もいる合同パーティ。実質お見合いパーティなので、全員が気合いに満ちている。


ドレスも貞淑な令嬢スタイルではなく、自分の魅力を最大限に見せる装いを選ぶ。

鍛え抜かれたしなやかな身体、ボンキュッボンなスタイルをよく見せるため、胸元や脚のラインを隠さない、身体にフィットしたデザインが好まれた。


全員がレッドカーペットを歩くモデルのようなドレスを着こなし、とてもよく似合っている。煌びやかさのレベルが違う。


「……私、この中に入るの?」

「ひかりちゃんには、私がいくつか用意しておいたわ。選んでね?」


リサリアはウキウキしながら、ハンガーにかかった数着のドレスを取り出した。


このボンキュッボンの群れに、一体どんな格好をすればいいのか。

ひかりは不安に思いながらも、リサリアが勧めるドレスを見る。


「まずはこれ!ひかりちゃんのキュートさを最大限に活かしたミニドレス!」


ピンク色のミニドレスで、胸元にはレースたっぷり。ノースリーブでスカートはひらひらと大きなフリルが揺れる。

いわゆる可愛い系アイドル衣装だ。


「次はこれ!ちょっぴり大人っぽいミニドレス!」


パープルのオフショルダー。身体にフィットしてスカートの裾には透け感のあるフリルが揺れる。

いわゆるセクシー系アイドル衣装だ。


「何でミニしかないの!?短かすぎますが!?」


向こうの世界ではパンツスタイル、こちらの世界でもロングスカートしか履いてないひかり。

それほど短くはないが、膝上丈のスカートに悲鳴を上げた。


「ええ?でもこのパーティでは、大人しいデザインの方が悪目立ちしちゃうわよ?」

「どんなパーティなの!この丈のドレス、誰も着てないじゃない」


周りを見れば、スリットが入ってるロングドレスを着ている。めちゃくちゃセクシーである。


「ひかりちゃんは身体のラインより、脚を見せたほうがいいかなって」

「なんで見せるの」

「スリット入りもあるわよ?」

「……いや、皆様と同じデザインは…」


一人子供が混じったようになりそう。これはこれで自分が辛い。


「体のラインを強調してない、大人しめの格好の人はいないの?そういうのがいいよ」

「それじゃ、これかしら」


リサリアが取り出したのは、光沢があるネイビーのドレス。スカートの裾に向かって白くなるグラデーションが綺麗だった。


その時、準備班が談話室にいる人たちへ声をかける。


「皆さーん、ヘアメイク担当の人も、もうすぐパーティに出ちゃうから急いでね〜」

「はーい。じゃあ、ひかりちゃん、これに着替えましょ。私も着替えるわ」

「う、うん」


ひかりたちは、慌ただしく準備を始めた。


会場は鍛錬場で、ガーデンパーティスタイル。

あちこちが花で飾られ、並べられたテーブルには様々な料理がずらりと置かれている。

外部に依頼した給仕が飲み物を配っていた。

かなり大規模なパーティだ。


リサリアは、スモーキーブルーのワンショルダーのロングドレスを着ていた。シルバーの刺繍がキラキラと華やかで、腕にはネイビーのストールを軽く掛けていた。

髪は下ろし、揺れる金のピアスがキラリと光る。


貴族令嬢はスリット入りや丈が短い大胆なドレスは着ていなかった。


男性陣は白シャツにベスト、光沢のあるジャケットでフォーマルな格好だ。いつもとはまるで雰囲気が違う。


ここでも貴族と平民のあいだには装いの差が出ていた。

貴族男性は一目で質が良いとわかる生地と仕立てのジャケットを着こなし、髪もキチンと整え、指輪やブローチなどの控えめな装飾をつけていた。貴族としては、夜会より気軽な装いになるのだろう。


「あ、ガルド」


ひかりは団員たちと話しているガルドを見つけた。

謁見用の騎士服とも違う、貴族男性としてのガルドを見るのは初めてだ。

騎士の精悍さより、どこか艶のある大人の男性の雰囲気で、ひかりは戸惑った。


格好良すぎて、知らない人みたい。


騎士服の時はあまりの格好良さに驚き、動けなくなった。しかし、今日は別の不安が胸を占める。


ガルドの周りは一目で貴族とわかる人たちだった。

スタイルの良い煌びやかな女性たち。

堂々とした男性たち。


ーーー自分なんかが近づいていいのかな。


ひかりは初めて、見目も良く地位も権力もある「貴族の騎士団団長」というガルドの立場を実感した。





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