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異世界では小さいねと可愛がられてます  作者: とりとり


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砦のお祭り

とある日の昼食。いつものように三人でテーブルを囲んでいた。


「親睦パーティ?」

「そう。砦に住む住人達が楽しめる催しをするのよ。既婚者や子供がいる団員は昼間に参加して、成人の独身者は夜から参加なの」


リサリアが、一枚の紙を見せてくれた。

砦の親睦パーティのお知らせが書かれていた。


「王都から料理を取り寄せたり、楽団を呼んだりするんだ。昼間は、鍛錬場に子供達が楽しめるように遊び場や競技を用意するぞ」

「楽しそうだね!」


お祭りみたいなものかな?

砦でそんなイベントをやるなんて思わなかったひかりは、ワクワクと目を輝かせた。

そんなひかりをガルドとリサリアは、微笑ましく見ていた。


「その日は、準備や来賓への対応もあるから、私とガルドは鍛錬場にずっといることになるわ。

夜のダンスパーティはドレスに着替えるから、準備の時に女子寮で会いましょうね」

「昼間は持ち場を離れられないから、夜に鍛錬場で会おう」

「わかった。二人とも忙しそうだね」


こんな大きい砦のお祭りの責任者は大変そうだ。

最近、周りもソワソワしてたのはこのイベントのためだったんだな。


どんなパーティなんだろう。楽しみだな!


――――


親睦パーティの日は快晴だった。

可愛く花で飾られている鍛錬場の入り口から、ひょこっと中を覗くひかりとエラン。

ちょっとだけ昼のパーティも見てみたくて、エランに連れてきてもらった。


夫婦や家族連れの団員たちは、みんな笑顔でパーティを楽しんでいた。

テーブルにはご馳走がいっぱい並んでいて、あちこちで美味しそうに食べている。

いつもと雰囲気が違って不思議な感じだ。


「人いっぱいだねえ」

「やっぱ子供がいると賑やかだよね。あ、ほらあそこに団長いるよ」


エランが指を指すテントがある方に、ガルドはいた。

騎士服を着て、団長として指揮を取っていた。

真剣な表情で団員たちと話し合っている。


貴族とわかる夫婦が、ガルドに近付き挨拶をすると威厳のある態度で優雅な笑顔を返していた。

その近くでリサリアも来賓客に挨拶をしていた。いつもの雰囲気と違い、貴族令嬢の顔をしている。


「ガルドたちがこういうお仕事してるの初めて見たかも」

「騎士団は普段貴族としてのやり取りってないもんね」


団員たちは貴族と平民の格好では明らかに差があった。来賓客でも、振る舞いで階級がわかる。


自分の知らない世界がそこにあった。


「おや、ひかりさん?エランも。団長に会いにきたのですか?」

「あ、シリウスさん。昼のパーティも見てみたくて来ちゃいました」


鍛錬場に入ってきたシリウスが声をかけてきた。

騎士服ではなく貴族として仕立ての良いジャケットを着て、きちんと髪を整えている。

隣には白い帽子を被り、繊細な花の刺繍が美しい柔らかな藤色のワンピースドレスを着ている上品な女性がいた。


5、6歳くらいの男の子と女の子が手を繋いでキョロキョロ周りを見ている。

遊び場コーナーで、きゃーきゃーとはしゃいで走っている子供たちの姿に気付いたようだった。


「父上、あっち見てきていい?」

「ああ、いいよ。転ばないように気をつけて」

「はーい!アイシャ、行こう!」


優しくシリウスが答えると、パアッと顔を輝かせて女の子の手を引いて走って行った。

仲良しなのだろう。二人笑顔で走る姿が可愛らしい。


「シリウスさんのお子さんですか?可愛いですね!」

「ふふっ。ありがとうございます。

ひかりさん、こちらは妻のアーリアです。アーリア、こちらは次期辺境伯令息の春のひかり嬢ですよ」


そう紹介されると、シリウスの隣にいた上品な雰囲気の女性がひかりに向かって微笑んだ。


「はじめまして。シリウスの妻、アーリアと申します」

「はじめまして。ひかりです」


ひかりが緊張しながら頭を下げると、アーリアは優しく目を細めた。


「ご挨拶できて嬉しいわ。夫から、砦の皆さんが大切にしている方だと伺っていたの。」

「そうなんですか?」

「ええ」


アーリアはにこやかに頷き、シリウスはひかりに優しく微笑んだ。


「この先も慣れないことは多いでしょう。私たちでよければ、遠慮なく頼ってくださいね。団長は弟のように思っているのですよ」


シリウスの言葉には、どこか気遣いが滲んでいた。

下位貴族のシリウスは、高位貴族の妻になるとはどういうことか、理解していた。


「……ありがとうございます」


ひかりは胸がきゅうと痛くなる。

家族がいないひかりには、年上のシリウス夫妻の優しさに、心が温かくなった。


アーリアはその反応に微笑み、そっとひかりの手を包み込むように触れた。


「大丈夫よ。あなたは礼儀正しくて、とても素敵な方だわ。ゆっくり、自分のペースで馴染んでいきましょうね」


彼女は、自分が異世界人とは知らないはずだ。

この気遣いはガルドとの関係の話なんだろう。

それでも、この世界での生き方を優しく導いてもらったような気持ちになった。


ひかりは少し泣きそうな顔になりながら、静かに頷いた。



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