無自覚キラー
「おはよう、ガルド」
「おはよう、ひかり。リサリアは顔色が悪いぞ?どうした?」
「ちょっと…二日酔いね」
昨夜のひかりのイケメンぶりに、歓迎会に出ていた団員たちは狂喜乱舞した。
彼女たちは完全に女子として恥ずかしがり、照れまくっていた。
「あっ…あの、そんなに褒めないで…!」
「さ、触るのは…あの!」
オロオロする彼女たちに、ひかりは少し困ったように笑う。
お酒を飲んで、少し濡れた口元を指でつつっと拭った。
「ええ?なんで?本当のことを言ってるだけだよ?」
「っきゃーーーーー!」
ひかりは、時には天使、時には小悪魔のように笑顔でみんなを一人一人褒めていた。
「その笑顔、可愛い」
「声がとっても綺麗」
「わあ、綺麗な色の瞳…」
「なんて優しい子なの?」
「大人っぽくていいなあ…」
ショートヘアの黒髪がサラリと目元にかかり、酔いで少し潤んだ黒目で見つめてくる中性的に見えるひかり。
巻き込まれてたまるかと早々に逃げた人間以外は、全員が動揺して酒が進み、酔いまくっていた。
夜中には女性団員たちは潰れていて、起き上がれなかった。
「ひかりちゃんも結構飲んだし、酔ってたわよね?二日酔いにならないタイプなのね?」
「ん〜ちょっと酔ってたかな?でも少しだけだし」
「え、待って。少ししか酔ってないの?昨日のこと覚えてる?」
「もちろん」
もちろん?あの女性陣を落としまくってたのを覚えてる?そんなバカな。
「昨日の…みんなのこと覚えてる…?」
「うん?覚えてるよ」
リサリアが恐る恐る問いかけると、ひかりはふふっと余裕のある笑顔を見せた。
「みんな、可愛かったよね」
周辺で物が落ちたり、椅子が倒れた。
女性の叫び声や呻き声が響き、突然騒がしくなった。
あの歓迎会にいた女子たちは、再度ひかりに落とされていた。
そういえば、飲み会の次の日はよく女子にお礼を言われていたな。
手作りお菓子を渡してくれる子もいた。美味しかったな、ハートのカップケーキ。
私は、酔うと褒め上戸になるらしい。
本当のことを言ってるだけなのに、とっても喜んでくれた。
やっぱり女の子ってみんな可愛いなあ。
この世界で、大きくても可愛い人はいっぱいいると気付いた。
可愛いを愛でるの大好きーーー
そんな思考のひかりが褒めまくるので、モテないわけがなかった。
ひかりちゃん、恐ろしい子…!!
女性団員は、ひかりちゃんに迂闊に近付くとヤバイ扉を開けそうだと慄いた。
この世界では、包容力の塊のリサリアとガルドがそばにいた。
守られるのに慣れないひかりは照れていたので、可愛らしさに隠れて本性が見えていないだけだった。
「……詳しく聞きたいけど、聞きたくない内容が出てきそうだな」
「そうね…私も知りたくなかった。こんな気持ちどうすればいいの」
「待て。止めろ。ひかりは俺のだ」
ガルドは本能で危険を察知した。
周りでダメージを受けているのが女子ばかりなので、嫌な予感しかない。
ひかりの手を取り、ジッと瞳を見つめて懇願する。
「ひかり、俺を捨てないでくれ」
「ああああ朝からなにを言って!?」
切ない表情のガルドを直視してしまい、ひかりは顔を真っ赤にして叫んだ。




