女子寮で乾杯
ひかりの風魔法で、ボロボロになったリアリアの部屋は解体され、新たに建て直す事になった。
住めるようになるまで、ひかりとリサリアは騎士団の女子寮で暮らすことになった。
「副団長、ひかりちゃん。ようこそ女子寮へー!」
「かんぱーい!」
「わー!かんぱーい!」
女性騎士団員達は、女子寮の談話室で歓迎会をしてくれた。皆ナイトドレスでリラックスした格好だ。ひかりもシンプルなオフホワイトのナイトドレスを着ている。
マスコット的な存在になりつつあるひかりは、すっかり可愛がられていた。
「癒し」がここに住むと知って、団員達はウキウキで準備していたのだ。
「ひかりちゃんは、お酒飲めるの?」
「うん。飲めるよ。これ美味しいね」
「あらー、わかってるね!」
「ヴィー隊長、もう酔ってる?」
緩いウェーブの長い赤髪をしたグラマラスなお姉様が、陽気に笑って乾杯してくる。
エランがヴィー隊長と呼んだセクシー美女は、ひかりを見るとギュッと抱きしめてきた。
「はあーん!可愛い!リサリア、こんな可愛い子を独り占めしてたの?ズルーイ!」
「ちょっとヴィー!私のひかりちゃんよ!」
「何よ。女子寮に来たんなら、リサリアだけのひかりちゃんじゃないわ!私だって可愛がるもーん」
ぎゅむと抱きしめられて、ひかりは顔を赤らめる。
お胸が凄いことに!ヴィーさんすご!
「ほらほら、ひかりちゃんが飲めないでしょ」
エランがベリッと剥がしてくれた。
ひかりは、落ち着くためにお酒をくいっと飲んだ。あっという間に飲んだので、お代わりをもらう。
「あれ、本当に飲めるんだね?」
「うん?」
ひかりは、コクコクと飲んでいく。ペースが早い。
それなのに全く顔が赤くならない。
「ひかりちゃん、大丈夫?これ、結構強いわよ?」
「ん?そうなの?」
ケロリとした顔で、ひかりはおつまみのチーズクラッカーをポリポリかじる。
あれ?ひかりちゃんってお酒強い?
顔をほんのり赤らめてぽわぽわする姿を想像していた団員たちは、意外なひかりの姿に驚く。
「リサリアとヴィーさんは、同期か何かなの?」
「ええ、そうよ。ヴィーは同期で、今は第二騎士隊の隊長なの」
「ヴィクトリア・グロリーよ。ヴィーって呼んで。よろしくね!ひかりちゃん」
「うん!ヴィー、よろしく!」
花が咲くように明るい笑顔を見せたひかりに、団員たちはトストスと撃ち抜かれた。
あら?なんかひかりちゃん、いつもと様子が違う?
リサリアが思った時には、すでに遅かった。
くるくるのオレンジの癖毛を一つにまとめ、花柄のナイトドレスを着ている元気な女子が話しかけてくる。
「ひかりちゃん、私はラーニャって呼んで?」
「ラーニャ?可愛い名前だね!」
「!!」
ラーニャはひかりの爽やかな笑顔を真正面から見て、顔を真っ赤に染めた。
シンプルで飾り気のないナイトドレスは中性的で、華奢な少年に見える。甘酸っぱい青春のワンシーンのようだった。
アッシュブラウンのストレートヘアに、ネイビーのナイトドレスを着た大人しめの女子も声をかける。
「わ、私はセイランって言います」
「セイラン…とっても綺麗な名前」
「っ!!」
トロリと瞳を細めたひかりに、セイランは胸を押さえた。”ひかり少年”の色気にやられて呻く。
あのトキメキを我が手に…!
団員たちは、ひかりに名前を呼んでもらおうと集まりはじめる。
「わっ私の名前は…!」
「私は!」
「? えっと、ごめんね?順番に呼ぶね?教えてくれて嬉しい」
こてりと首を傾げたあと、ふわりと笑うひかりに、団員たちはギュンギュンときめいていた。
ひかりは、向こうの世界では「背が高くて、かっこいいね」と褒められていた。
なのに異性にモテないと言っている。
つまり、同性にモテる女子キラーだった。
タチが悪いことに、酒が入るとたらし込むタイプだった。
「もしかして、ひかりちゃん酔ってる?」
「ひかりちゃん!お水飲みましょ!?」
「リサリア、ありがとう。優しくて大好き」
ひかりは、上目遣いで照れるように笑う。
リサリアの血圧がギャンッ!と上がった。
エランは収集つかなくなってるこの場を、もう放っておくことにした。




