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異世界では小さいねと可愛がられてます  作者: とりとり


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まだベイビー

「教師が見つかるまでは、自主勉強となってしまいますが、大丈夫でしょうか?」

「はい。周りの人たちに教わっているので、大丈夫です」

「そうですか。では、進捗によって教材の種類を変えていきますので、早めに教材の変更を希望される時は私にご連絡ください。新たな教材をお渡しします」

「ありがとうございます」

「それから、こちらはーーー」


ひかりとノエルは、教材のことや勉強のスケジュールなどを話していた。


ノエルさん、仕事ができる人の話し方だ。サクサク話が進む。さすが宰相補佐さんだ。

ひかりはつい最近までの会社員時代を思い出す。こういう人がいると、仕事がスムーズに進んで助かるんだよね。


ひかり嬢、平民と聞いているが物事を理解するのが早くて、効率的な考えも持っている。こんな文官がいたらとても仕事がしやすいだろうな。


王城勤め(会社勤め)の気持ちがわかる者同士、なにか通じ合うものがあった。


効率良く仕事が進むって気持ち良いよね!

残業しないで済むもんね!

ひかりとノエルは笑顔で話していた。


「なんか二人とも活き活きしてるな」

「ノエルおじ様は、さっきまでお疲れな感じだったのに」


ガルドとリサリアは二人のやりとりを不思議そうに見ていた。


「最後に、ひかり嬢の今月分の予算をお持ちしております。以降は毎月、騎士団の予算と共にお送りしますので、騎士団からお受け取りください」

「あ、私はいずれこちらを出る予定なんですが、その時も騎士団から受け取りで大丈夫ですか?」


「え?ひかり嬢はここにずっと暮らすんじゃないの?」

「いつまでも、リサリアの部屋に居候するわけにもいきませんので。私は砦で住むためにお店を開こうと思っています」


ひかりの言葉にアーノルドは、驚いていた。

プロポーズを受けたなら、あとは婚約をして結婚するだけだ。

まだ領地に帰らないガルドと寮を出て、一緒に暮らすならわかるのに、別々に暮らそうとしてるひかりが理解出来ない。


「ええ?ガル兄と家族寮に住めば良いのに。国も次期辺境伯の春って認めてるんだから夫婦同然じゃない」

「はい!?」


その手があったか。リサリアはポンと手を打つ。


ただ…ねえ。


チラリとガルドを見ると、呆然と立ち尽くしていた。結婚生活を想像して頭が限界突破してそうだ。


ひかりちゃんも、初恋を認識したばかりだ。

伴侶との暮らしが、今ここで決まることに怯えが見える。


「ちょっと…まだ無理そうねえ」


育んでるものが未熟すぎない?

まだ恋が始まったばかりの二人を見て、リサリアは呟く。


「ひかり嬢は、政略結婚を聞かされて育っている貴族令嬢とは違います。

周りに周知されたからすぐ嫁げなんて、貴族令嬢だって覚悟がいります。

平民の女性なら、ロクに付き合ってないのに今すぐ夫婦として暮らせなんて言われたら、逃げ出しますよ」


ノエルは冷静に今の状況を察した。

貴族と平民の感覚はかなり違う。この世界にすら慣れていないひかりなら、破局の道一直線ではないか?


ガルドが一瞬で「今すぐ結婚」の妄想を消し去った。

側にいるひかりの手をそっと取る。


「今すぐ二人きりで結婚式を挙げて、俺たちの愛の巣で片時も離れず暮らすのは急がなくていい。まずはひかりが今の暮らしに慣れるのが先だ。ゆっくり愛を育めばいい」

「ガルドは今日、様子おかし過ぎるけど大丈夫?お酒飲んだ?」


ガルドの妄想が口から出ていた。


確かにこの調子だと、二人になにかあった時に騎士団が機能しなくなりそうだ。


アーノルドは、再びガルドの様子がおかしくなっていて、苦虫を潰したような顔をしていた。


「もう帰りたい。俺はこれから手を引く」

「殿下、落ち着いて」

「もうすぐ終わりますから。帰ったら休みましょう」


側近のジェイドとフェリクスは落ち込んでる殿下を見て、ちょっと喜んだ。


あのアルが、かなり精神的にダメージを受けている。

当分はアルの行動が大人しくなりそうだな。


エッセン団長の奇行のお陰だ。ありがたい。

俺たちを巻き込まないでくれると、もっと助かるんだけどなあ。



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