何の会議だっけ
会議室には、アーノルド王子、側近の二人、王城の文官、さらに王妃様の侍女が椅子に座って待っていた。
ガルドとリサリアが礼をする。
「お待たせしました」
「ねえ、ガル兄。その顔どうしたの?」
「なんでもありません。お気になさらず」
ニヤニヤとアーノルドは、さっきイチャついてた兄弟子のガルドを揶揄って遊ぶ。側近たちは、ハラハラしながら見ていた。
「ひかり嬢にやられたの?さっきリサリア先輩に獣呼ばわりされてたけど」
「ひかりは…そんなこと…しな…い…」
「え……ちょ、なんでそんな落ち込むの。プロポーズ成功したんじゃないの?」
ガルドが、この世の終わりのように落ち込みだしたので、アーノルドは慌てた。
「ひかり…怒らせてしまったかも…」
「何しでかしたんだよ」
さっきのあの浮かれたイチャつきぶりから、どうすればこうなるのか。アーノルドは、ガルドを呆れて眺める。
リサリアは、理性が弱すぎるガルドを半目で見ていた。
他の面々も、あのエッセン団長がここまで落ち込むなんてと驚いていた。
プロポーズした相手との間で、余程の問題が起きたのかと推察する。
「つい嬉しくて、抱き締めてしまった」
「は?」
………は?
何言ってんだコイツ。
全員が同じ気持ちだった。
「え?ガルド、あなたそれでエランにあの紙を叩きつけられたの?」
「うう、離したくなくて…」
リサリアはもっと色々想像して、あとで再起不能にしてやろうかと考えていたので驚いた。
ガルドは手で顔を覆って、後悔と反省をしまくり、悲しんでいる。
「ねえ、この話もしかして、すごいどうでもいい?」
「どうでもよくない!ひかりが怒ってたら、どうすればいいんだ!」
「謝ればいいでしょ」
すごく真剣にアーノルドに向かって、ガルドが吠える。
ガルドのしょうもない恋愛相談に、アーノルドは正論を言った。
「許してくれなかったら、どうすればいいんだ。死ぬか?死んで詫びるか?」
「怖えよ。死ぬ前に何度も謝れよ」
真っ青になって、思い詰めながら呟くガルド。
明らかに様子がおかしいガルドに、アーノルドは困ってリサリアに助けを求める。
「リサリア先輩、ガル兄はどうしちゃったの?」
「エッセン一族の血族の特徴が思いっきり出てるんですよ。さすが一族筆頭の嫡男ですね」
リサリアも困った様子で見つめた。
愛が重いというか、ヘタレすぎてどうすればいいのか悩む。大の男のどうでもいい泣き言を聞き続けるのは、ごめん被りたい。
そもそも、今日の集まりは恋愛相談会じゃない。
しかし、ガルドの錯乱振りが酷くて会議が始められない。
どうすりゃいいんだ、コレ…。
シクシク悲しんでいる騎士団団長を見ながら、ここにいる全員が途方に暮れた。




