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異世界では小さいねと可愛がられてます  作者: とりとり


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71/106

色濃く受け継いだもの

「ひかりちゃ〜ん!大丈夫だった?」


アーノルド王子が臨時見張り台の階段を降りて行った後、エランが階段を駆け登ってきた。

焦った様子で、エランはひかりを探して見まわす。


ひかりは、ガルドに思いっきり抱きしめられていた。


「あー…。すみません、お邪魔しました」

「違う違う!邪魔じゃないから!行かないで!」


くるりと回れ右して階段を降りて行こうとするエランを、ひかりは真っ赤な顔で引き留めた。


「ガルドはお仕事でしょ!?殿下行っちゃったよ!リサリアもきっと待ってるよ!?」


エランがいても気にせず抱きしめるガルドに、ひかりは焦りながらジタジタと離れようとする。


な、なんだ?なんかいつものガルドと違う!?


いつものそっと優しく見守るガルドの見る影もなく、スリスリとひかりの頭に頬擦りしていた。


ひかりがアーノルド王子の求婚を断った上に「ガルドの方がいい!」宣言で、ガルドのタガが簡単に外れていた。理性ペラッペラである。


「団長、すみません!これ副団長からです!」


エランが叫ぶと、思いっきり団長の顔に白い塊を叩き付けた。


「ヒィッ!?」


ガッとすごい音がして、ひかりは悲鳴をあげて硬直した。

ガルドの頬に何かついている。よく見ると白い紙で何か書いてあった。


エランが叫ぶ。


「ひかりちゃん!読んで!」

「え?ええと…無理矢理はダメ…しつこい男は嫌い…?」


カッとガルドの目が開いて、ひかりの身体をそっと離す。優しく頭を撫でた後、階段の方へ歩き出した。


「仕事に行ってくる」

「う、うん」


頬に紙が付きっぱなしだ。ひかりはポカーンとしたままガルドの姿を見送った。


「…あのままでいいのかな?」

「そっとしとこう。多分、副団長がトドメ刺すから大丈夫」

「それ、大丈夫じゃなくない…?」


エランの不穏な言葉に、ひかりは困惑しかなかった。


ーーー


ガルドは軽くふらつきながら、会議室へ向かった。


「なあ、あれ…」

「シッ、関わらない方がいい」


団長の姿を見て、声をかけようとする団員を他の団員たちが止める。


「団長は不可解な行動を起こす日があるが、そっとしておくように」


副団長からの訳の分からない通達は、多分これのことだろう。

頬に張り付いたメモ紙に書かれた内容からして、ひかりちゃん関係だ。


触らぬ神に祟りなし。

団員たちは、そっと目を逸らした。


会議室の前では、リサリアが待っていた。

ガルドの顔に貼り付いたメモ紙を見た瞬間、リサリアは思い切り手刀をガルドの頭に下ろしていた。

ヒラリと白いメモ紙が、顔から剥がれて落ちた。


「理性を無くすのが早過ぎるわ!獣か!」

「うぐうう…まさか、俺もここまでとは」


ガルドは、頭を抱えてしゃがみ込む。

足元に落ちた紙の文字が目に入り、心が抉れて呻いた。


リサリアはこの先、万が一の為に、エランにガルドの心を抉る文を書いた紙を渡しておいた。

これをひかりちゃんに読ませれば、理性を取り戻せるだろうと踏んでいた。

まさか、数時間も経たずに使われるとは思わなかったが。


「何やってんの。二人とも」


開いた扉の隙間から、呆れた顔をしたアーノルド王子がこちらを見ていた。




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