ざーんねん
「ひかり!どこだ!」
下の方から、ガルドの声が聞こえた。
彼の声を聞いただけで、ひかりは心から安堵した。
大きな声で叫ぶ。
「ガルド!!見張り台にいる!」
キッとアーノルド王子をひかりは見た。
この王子、大嫌い!!絶対何にも話してやんない!
ザッとガルドは階段を駆け上がってきた。
「ひかり!」
「ガルド!」
ひかりは立ち上がって走りだした。アーノルド王子を通り過ぎ、ガルドに抱きついた。
「大丈夫か!?」
「大丈夫!」
「? ひかり?」
ひかりは眉を顰めながら、ぎゅうとくっついた。怒りが収まらない。
「側近の方たち、お願いしましたからね!ちゃんと伝えてくださいよ!」
「は、はい!」
後ろを振り向いたひかりに、ギッと睨まれながら念を押された。
側近の二人は姿勢を正して返事をした。
さっき震えてたよなこの人!?別人か?怖え!
「ひかり、何の話だ?」
「結婚はお断りですって話」
「ほお…?」
フンフンと鼻息荒く怒るひかりの言葉に、ガルドは魔王のような威圧を出す。
「殿下、先日言いましたよね?ひかりは王太子妃には向かないと」
「すごい向いてると思うけど」
「嫌です!ガルドの方がいいです!」
「え!?」
突然の告白に、ガルドが抱きしめているひかりを見る。
「あ!?いや、違う!違わないけど違う!」
「…ひかり、俺を選んでくれるのか?」
「ちょちょちょ、聞き流して!今の忘れて!」
ガルドは嬉しそうな表情で、ひかりを優しく見つめた。
ひかりは真っ赤になって首を横に振る。抱き締められてて逃げられない。
「ちょっと、イチャつかないでくれる?」
「殿下こそ、想いあってる二人を割くようなこと止めてくれます?」
アーノルド王子はジトッと二人を見ると、ガルドはひかりを強く抱き締め、ハッと嗤った。
「うわ…自信満々になった。返事延ばされてた癖に」
「うるさい」
「き、聞き流して〜…」
「ダメ」
アーノルド王子は、イチャつき出した二人を見て、すっかりやる気をなくした。
兄弟子のガルドの幸せを壊すのは忍びない。
「じゃ、諦めるかあ」
肩をすくめて歩き出す。側近たちも後に続く。
「殿下、陛下に伝えますからね」
「あ?諦めるって言ってるだろ?」
「ひかり嬢の宣言を無視できません」
「マジかあ。揺さぶり方、ちょっと間違えちゃったなあ」
何者にも負けない強いひかり、怯えて震えて守られるひかり、どちらも本当の姿だったとは、計算外だった。
「不思議な子だなあ。あ、年上だっけ?訳わかんないね。異世界人て」
「俺たちは、お前の方が訳わかんねえよ」
ゲンナリとした様子で、側近の二人は付いて行く。
この後、王城でめちゃくちゃ怒られるんだろうなあ。
お互い目を合わせて、どんまいと慰め合った。




