追いかけっこ
朝にガルドから言われた通り、お昼は護衛のエランと一緒に食堂で食べていた。
「ひかりちゃんのメニュー可愛いね」
「厨房に頼めば、同じの食べれるのかな?一緒に食べたいね」
ひかりは野菜たっぷりチキンサンドは同じ(といっても他の団員の方が量が多い)だったが、他は綺麗な葉っぱの形のパイとミントのような飾りが乗ってるミルクプリンだった。
「うーん。休みの日じゃないと無理かなあ。それじゃ足りないや」
「なるほど」
みんなと食べる量が明らかに少ないから、凝ったのを作れるのか。
「ん?なんか入口が騒がしいね?」
エランが、食堂の入口の方を気にする。
誰かが来たみたいだ。団員達が慌てている。
警戒した方がいいか?
「ひかりちゃん…あれ?」
横に座ってたひかりがいない。
エランはキョロキョロ辺りを探す。
さかさかとひかりはすごい速さで、しゃがんで歩いていた。
こちらを見て、シーッと静かにするようにサインを出している。
「えーと…どうするかな?」
チラリと騒がしい入口を見る。
明らかにひかりは逃げていて、外への逃げ道を慌てて探している。
他の団員も、ひかりの不可思議な行動に怪訝な顔をしたが、すぐに察した。
「やあ、今さっきひかり嬢を見かけたんだが。どこに行ったのかな?」
エランの所へキラキラと輝く笑顔で話しかけてきたのは、アーノルド王子だった。
エランはスッと立ち、礼を取る。
「申し訳ありません。ひかり様は少し席を外すと言って、出て行きました」
「どこへ?」
笑顔だけど目が笑ってないのがわかる。
エランは平然と応える。
「女性の所用です。花を摘みに」
「そうか」
エランが話している間に、団員たちがひかりを誘導していた。座ってる団員が、指で進む方向を教えてくれた。
出口では体の大きな団員たちが並んで見えなくしてくれた。
(ありがとう皆!)
心の中でひかりは団員たちにお礼を言って、食堂を出た瞬間、ダッシュで逃げた。
あの王子とは話したくない。というか、もう会いたくない。
どこに隠れよう?慌ててキョロキョロ周りを見る。リサリアとガルドは仕事中だ。迷惑はかけれない。
トイレだと出入口が一つだ。
部屋に戻っても、入られたら逃げ場がない。
「ど、どこに行こう?」
焦りながら走り続け、息が切れてきた、
ハアハアと立ち止まって辺りを見回す。
臨時見張り台が目に入ったーー
あそこだー!!
ひかりは最後の力を振り絞って階段を登った。
「うえ、くるし…」
壁に寄りかかりつつ座り込んで、なんとか息切れを落ち着かせる。
エランちゃんには悪いことしたなあ。でもあの王子は逃げる一択だ。
早く戻りたい。大きな溜め息を一つ吐く。
「はあ。これからどうしようかな」
「暇なら話をしないかい?」
「ぎゃーーーーっ!!」
いつの間にかアーノルド王子が側にいた。
ひかりは飛び上がって驚いて腰が抜けた。




