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異世界では小さいねと可愛がられてます  作者: とりとり


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初恋 

「私は正気よ。ひかりちゃんは、どんなサイズでも可愛いわ!ガルドより大きくても可愛いじゃない!」

「それ、正気な人が言うセリフじゃ無いから。どうしよう、どこで診てもらえば…」

「病気じゃないから!酷いわ。ひかりちゃん、私の愛を疑うのね」

「えええ…」


よよよと泣くリサリアを見ても、困惑しかない。

愛が重過ぎる。何でそんなに。


ーーーーあ、そうか。


ひかりは、無条件に愛を謳うリサリアを見て気付いた。


ガルドの告白で戸惑ったのは、どうして私を好きになったのかわからないからだ。

結婚なんて一生の誓いを、何で私にしたいと思うのかわからない。


だって私は、選ばれることなんてなかったから。

信じられないんだ。

…いつも誠実で優しいガルドの気持ちを信じられないの?私。


ひかりは、一気に落ち込んだ。


「お、おお…。私って奴は、なんて疑り深い人間なんだ。ヤバイのはリサリアじゃない…私か…」


「えっ!?そんなに落ち込まなくても、わかってくれればいいのよ?ていうかヤバイ奴って思ってたの?ママはちょっとショックよ!?」


頭を抱えて悶え苦しみ出したひかりに、リサリアは慌てる。

いつもの飄々としたひかりは、見る影もなかった。

ひかりは頭を上げ、リサリアに少し恥ずかしそうに尋ねる。


「リサリアもガルドも、私のどこが…す、好きなのかな」

「え?それは全てでしょう」

「ダメだ、聞く相手を間違えた。おやすみなさいリサリア」

「待って待って!ちゃんと答えるから!」


諦めて布団に潜り出したひかりに、リサリアは縋って懇願した。なぜか、いままで築いた信頼関係が崩れそうな気がする。

起き上がらず、寝ながらこちらを見るひかりに一生懸命リサリアは答えようとした。


「えーっと、ひかりちゃんは、この世界じゃ見た目が小さいから好かれてると思ってるのね?」

「うん。だって向こうとこっちの世界の違いはそれしか考えられない。私は何も変わってないし」

「じゃあ、内面は好かれてないと?」

「え…そ、それは…嫌われてはないけど、そこまで好かれるような中身とは思えないというか」


ひかりは、自信なさげにモゴモゴと口ごもる。

リサリアは、何故こんなにもひかりが他人の好意を受け入れないのか理解した。


「ひかりちゃんは自信がなさ過ぎだわ!自分の良さがまっったく解ってない!だから一線引いてたのね!」

「えっ、そう…だった?」

「無自覚!もう染み付いてるのね。わかった。明日ガルドに聞きましょ。ひかりちゃんのどこが好きか」


今までの振る舞いもそれで納得した。

あんなにガルドが好意を見せていたのに、絶対に甘えようとしない態度。当然のように一人で背負う思考。

自信のなさがそうしてたのだ。

この壁を壊せるのは、ガルドしかいない。


「待って待って。何でそうなるの」

「だって、知りたいのは友愛じゃなくて恋愛でしょう?ガルドに聞かなきゃ」

「う…」

「あとね、ひかりちゃん。好きって気持ちは相手と同じじゃなくてもいいのよ?」

「え?」


ひかりはポカンと驚いていた。

結婚って愛し合う者同士がするものじゃないの?


「同じ量の熱を持ってなくてもいいの。あのガルドの重い愛と同じにするなんて、難しいわよ」

「重い?」

「そうよ。だって、殿下に次期辺境伯の春って言ったんでしょ?国中に俺のひかりに手を出すなって宣言したのと同じよ」

「う…わああ」


ガルドは、なんてことしてんだ。ひかりの顔が赤くなる。

その顔を見て、リサリアはひかりの頬をつつく。


「ひかりちゃん、顔が真っ赤。体は思ったより心に対して正直よ。わからないのは、目を逸らしてるだけ。

ガルドに抱きしめられるのは、嫌じゃなかった?」

「は!?なに?!なんで!?」

「砦から王都に戻ってくるのが見えてたの」


誰も見てないと思ってたけど、もしかして他にも見られてた?

恥ずかしさにひかりは布団の中に潜った。


「ガルドに手を握られるのは?口付けは?子供は作れる?」

「何言ってるのーーー!?」


すごいことを言い出したリサリアに、ひかりは真っ赤な顔でガバリと起き上がる。


「だってガルドは貴族の嫡男よ。後継は必要だわ。産めないなら養子を取るだろうけど、まずは妻と子をもうけようとするわ。ねえ、ひかりちゃんは、これを他の人と出来る?嫌かどうか考えてみて」


ガルドと、そういうこと。

考えようとすると、恥ずかしさで死にそうになった。

嫌かどうか…い、嫌かどうかあああ?


「殿下と出来る?」

「無理」


リサリアの一言で、中々考えられなかった頭がスッと冷静になった。


「ひかりちゃんは殿下とガルドの二人に選ばれて、殿下は即答よ。ガルドには、すごく悩んでるの気付いてる?この砦の団員だったらどう?出来る?」

「無理…」

「団員たちでも即答なのね?さっき私がガルドに告白されて、嫌だったか聞いたの覚えてる?」

「覚えてる…う、うわあ」


クスッとリサリアは笑った。

ひかりも気付いたようだ。布団の中に慌てて潜った。


無自覚に選んでいたのだ。

ガルドの告白は嫌じゃない。ガルド以外は嫌。


彼だけが特別。


悩んでたのは、ガルドと愛の熱が同じじゃないから。そんなの、恋人同士の痴話喧嘩によくあることだ。


「は、恥ずかしい…」

「両想いね。おめでとう、ひかりちゃん」

「うわわわ、やめて〜」


初恋を自覚したひかりの愛らしさに、リサリアは優しく微笑んだ。


やっぱり、ひかりちゃんは可愛いわ。



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