大人です
「じゃあ、ひかりちゃん。また明日ね」
リサリアはにこやかに微笑み、自分の居室へ帰っていった。
ガルドはひかりの少し前を歩き、自分の部屋の方へ案内をする。
「こっちだ」
二人は執務室からほど近い、団長専用の居室へ向かった。
寮とは別の場所にあり、騎士団の喧騒から少し離れた静かな空間だ。リサリアの部屋もまた、寮とは別に確保されている。
「さあ、どうぞ。入って」
「お邪魔します……」
ひかりはおずおずとガルドの隣で、声を小さく漏らす。
目の前にはシンプルで整った部屋。大きなベッドと、ひかりが余裕で寝れそうなソファも一つ置かれていた。
身体が大きいから、ベッドもソファもこんなに大きいんだなあ。
異世界の部屋に興味津々でキョロキョロ見るひかり。
男性の部屋だという意識は、すっかり飛んでしまっていた。
「じゃあ、これに着替えるといいよ」
ガルドから寝巻きを差し出された瞬間、ひかりは思わず固まる。
「どうした? 早く着替えて寝ようか」
ガルドは声をかけると、自分もベッドの横で着替えを始めた。静かな衣擦れの音が聞こえる。
ひかりは一瞬声が詰まり、目を逸らす。
「えっと、トイレ借りてもいいですか…?」
「ああ、廊下にある扉がトイレだよ」
「ありがとうございます」
ひかりは指示されたトイレへ入り、小さく息を整えた。モソモソとジャージを脱いで、渡された寝巻きに着替え出す。
ビックリした。この世界は、着替えとか恥ずかしくないのかなあ?ガルドさん年上っぽいし、気にならないのかな。
「あれ、大きい…。」
薄手でシンプルなシャツを着ると、ダボッとしてて肩は落ち、手もすっぽり隠れてしまう。
腕をまくり、ズボンを穿くと丈は余りまくり、ズルズルと下がった。
いつもメンズサイズを普通に穿けてたのに、異世界サイズは大きいな。
腰は紐で調節出来るけど裾が長すぎる。裾を折って何とか調節するが、ダボダボの服を無理やり着てる姿は何だかおかしい。
違うサイズの物、借りれないかな?
そう思いつつ、ひかりは畳んだジャージを持って部屋に戻った。
ガルドは着替え終わり、片付けてるとひかりが戻って来たのに気付いた。
「服のサイズ、大丈夫か?」
ガルドは振り向き、ひかりの姿を見て固まる。
サイズが大きいために、身体をより華奢に見せていた。さらに薄い寝巻きは、ひかりの女性らしい胸の膨らみをはっきりと浮かび上がらせていた。
「は?……え?女の子……?」
「え?いや、女の子って歳ではないですけど…」
ひかりは、ビックリしている表情のガルドに戸惑い首を傾げる。
「え?え?ひかりは何歳だ?」
「28です」
平然と答えるひかりの言葉に、静寂が訪れた。
ーーーー何?この空気
「ちょっと待ってて!リサリア呼んでくるから!」
ひかりが不思議そうにしてると、ガルドは突然走って部屋を出て行った。
「お、おお?」
ひかりは呆気に取られながら、慌てて出て行くガルドを見送った。




