ぬくもり
馬は一定の速度で走っていた。
ガルドに大人しくするようにと言われてから、ひかりは話すのも乗馬の邪魔かなと思って静かにしていた。
何分走ってただろうか。ひかりは落ちないように抱きついてるガルドの逞しい身体が温かくて心地良くて、眠くなってきた。
お天気も良いし、ガルドいい匂いするし温かいし落ちる心配ないし、安心感がすごいな。
ひかりは長時間、乙女な気持ちでいれるタイプではなかった。
これはあれだ。お出掛けの時に眠くなった子供が、お父さんに抱っこされて移動するやつだ。
気付いたら目的地に着いてるんだ。
この世界に来てから、いつも誰かに守ってもらってるなあ。向こうではずっと守る側だったのに、なんか変な感じ。
リサリアは第二の母みたいだし、ガルドは、いつも気にかけてくれて……優しくて……温かい……安心…する…
半分夢の中へ向かっていたひかりは、子供が甘えるようにぎゅうとガルドにくっついていく。
「っ…ひかり…?」
ひかりの動きにガルドは驚き、そっとひかりを見るとスヤスヤ眠っていた。
「……ええ?」
信頼しているにしても無防備が過ぎるのでは?
知らない場所に連れて行かれる危機感はないのか?
それとも俺を男と思ってないのだろうか?
ひかりの呑気な寝顔は癒されるが、これは本当に簡単に攫われるなと確信出来てしまう。
「ーーー王都では全力を出すから、覚悟しろよ」
ボソリと呟きながら、ひかりを優しく抱きしめ直す。
騎士団での牽制を見せつけたガルドは、次は王都の貴族達だと気合いを入れる。
もう少しで王都の入り口に辿り着こうとしていた。
「ひかり、もう直ぐ着くぞ」
「んう?」
優しく腰をポンポンと叩かれ、ひかりは薄ら目を開けた。
完全に寝ていたひかりは、ガルドに思い切り抱きつき体重を預けていた。
「あ!?ご、ごめんなさい」
めちゃくちゃ寄りかかってた…!恥ずかしい!
ひかりは慌てて離れようとして、ガルドにククッと笑われながら止められる。
「大丈夫だから落ち着いて。暴れたら危ない。馬が驚くぞ」
ひかりは乗馬してたのを思い出して、大人しくなった。
「えーと…すみません」
まさか抱きついて熟睡するとは…ひかりの顔が赤くなっていく。
「寝心地良かったか?」
「うっ、ううう」
とても良かったですとは流石に言えず、そろそろとガルドの腰に回してた腕を緩めようとすると、ぎゅうと片腕で抱きしめられる。
ガルドの身体に頬が当たり、緩めていた力が再び入った。ガルドの腕の力が少し緩んだ。
「もうすぐだから、しっかり捕まってて。あ、起きてろよ?」
こちらをチラリと見ながら優しく笑うガルドとひかりは目が合い、釘付けになる。
イ、イケメンの笑顔は破壊力があるなあ!
見惚れてたひかりは、ハッとなり再びしっかり捕まった。
ガルドは、赤い顔して狼狽える可愛さと、話をちゃんと聞いて素直にくっついているひかりに、こそばゆく口元が緩んでいた。




