彼氏いない歴年齢ですがなにか
ひかりが頷いたのを見て、するりと手を離すとガルドは安心したように息を吐いた。
「明日、住む場所を改めて考えよう。午後に執務室に来てくれるか?」
「は、はい。」
ひかりは目を泳がせながら答えた。
なんだかソワソワする。
「そろそろ部屋に戻りますね。おやすみなさい。」
ぺこりとお辞儀をすると、ガルドの返事を待たずに階段を降りていった。
早足で歩いて行く。徐々に小走りになっていって、誰にも話しかけられないように慌てて部屋に戻った。
無の境地で寝る支度をして、ジッとしてられず掃除も始める。
「ひかりちゃん、ただいま〜♡」
リサリアが帰ってきて、笑顔でひかりに抱き付いてくる。
「おかえりなさい。」
「…ひかりちゃん?どうしたの?」
ギュウとくっついて離れないひかりに、甘えてくれることに喜びつつもリサリアは心配になった。
「何でもない……いや…あ〜なんていうか……うぅ〜。日本人は触れ合いに慣れてないのよ…勘弁してください…」
「…………」
リサリアは、ひかりの顔が見えるように優しく身体を離した。
眉を下げてなんとも言えない表情をしているひかり。
「ダレニナニヲサレタノ?」
リサリアの表情は女神のように優しく微笑んでいた。心の中は暴風が吹き荒れている。
ひかりはそっと目を伏せて俯く。
「ガルドさんが、私を慰める為に冗談を言ってくれただけ…ただ私が………こういうの慣れてないだけですー!もー!いい大人が!こういうのに動揺するの恥ずかしいなあもう!リサリアー!なんでこの世界の人達って、そんなに大人の落ち着きあるの?!」
ひかりがわぁっと賑やかに頭を抱えて悶え出したので、リサリアは後でガルドに決闘を言い渡そうとするのは、とりあえず止めることにした。
「ああああ恥ずかしい。動揺したのバレてないといいなあ!ああああ」
「ひかりちゃんは、結構照れ屋さんなのねえ」
「そうですよ!恥ずかしがり屋さんですよ!大人だって恥ずかしいもんは恥ずかしいですよ!」
「ちなみになんて言われたの?」
「私を好きな人はいっぱいいるから結婚したかったら出来るって…ガルドさんも立候補するって…。
冗談なのはわかってるよ!?でもその後に、手を握ってここにいてくれって真顔で言われたら、どういう顔すればいいの!?難易度高すぎてわかんない!大人の世界ってすごいなー!?」
ひかりは「恥ずかしい!」と両手で顔を覆って仰け反り悶えていた。
ガルドの告白はキレイに流されている。
リサリアは残念な子を見る目で、ひかりを眺めていた。
こんなにわかりやすい話を冗談と受け取っちゃうんだ。ひかりちゃん…。
流石にちょっとだけガルドが不憫に思えてくるわね。
リサリアはひかりの頭を撫でながら、思案する。
ひかりちゃんには幸せになってもらいたい。貴族じゃないのだから、結婚はやはり相思相愛の相手が良い。
でも、ひかりちゃんを王族から守ってくれる相手は限られてしまう。
辺境伯を継ぐガルドは適任なのよねえ…。
でも嫁いでしまったら、領地に行くかもしれない。簡単に会えなくなっちゃうのはイヤ!それだけはイヤ!
結局、ガルドを認めないのはリサリアの我儘だった。
…でも、ひかりちゃんが選んだ人なら、反対なんて出来ないわ。
「ああっ!悩ましいわね!」
リサリアがギュウとひかりを抱きしめた。
「わかってくれる?」
「もちろんよ!私はひかりちゃんの味方よ!」
「ま、ママぁ〜安心感と包容力半端ない。すごい」
「うふふ、どんどん甘えて頂戴」
「ヤバイ。ダメな大人になる…」
そう言いつつも離れないひかりだった。




