美女のお願い
あまりの恥ずかしさに、開店準備の話は今度にしようと解散した。
次の日、夕食になってもガルドとはまだ顔を合わせていない。食堂ではリサリアと二人で食べていた。
ガルドがいた時は遠慮してたようで、朝から他の騎士達が話しかけてきた。
「ひかりちゃん、おはよう!」
「聞いてよ、ひかりちゃーん」
見た目の柔らかい雰囲気と聞き上手なひかりは、1日で騎士団員達の癒しになっていた。
そして若い子達は、話してみるとひかりには、年上お姉さんの余裕を感じられて、一目置いていた。
「ひかりちゃーん」
「あ、エランちゃん」
ヒラヒラと手を振りながら、エランがやってくる。
「昨日のお店巡りは楽しかったね〜」
エランは笑顔で向かいに席に座って、食事を始めた。
「うん!あ、そうだ。エランちゃん、今度可愛いカフェに連れて行ってもらえないかな?この世界のカフェってどんな所か見たくて」
「え!?いいの?やった〜行く行く!」
目を輝かせてエランは両手を上げて喜んでから、指折り数え出す。
「どんなタイプが好き?キラキラヒラヒラな感じ?もこもこふわふわな感じ?えーとあとは……」
「そうだった…可愛いにも色んなジャンルあったね…。エランちゃんは全ジャンルいけるタイプか。
じゃあ、流行ってる所と長く続いてる所とエランちゃんのお気に入りを。
あ、あとカフェじゃなくて可愛い物を売ってるお店にも行きたいかな」
「あっはー!ひかりちゃん大好きー!」
大好きな可愛いづくしの1日を想像して、エランは上機嫌になってた。
「ひかりちゃん、私も行きたーい!」
リサリアは溜まった仕事を捌いてる最中なので、食事の時しかひかりと一緒にいれない状態だった。
「えーと、お仕事の方は?」
「3日で終わらせてくるから!死ぬ気でやるわ!」
「そんなに無理しないでも…」
「一緒に行っちゃダメ?」
リサリアはうるうると目を潤ませて、胸の前で祈るように手を合わせている。
美人の潤んだ瞳でお願いは、破壊力がすごい。
近くの団員達が流れ弾を喰らって、胸を押さえて呻いていた。
ひかりも顔をほんのり赤らめていた。
「い、いいですけど、無理しないでくださいね。」
リサリアはパアッと輝く笑顔を見せて、また周囲の人間達は呻いていた。
「ありがとう!うふふ楽しみ!ところで、なんでエランには普通の話し方なの?」
「え?敬語じゃなくてもいいよって言われたので…」
「私も!私もそうやって話して!」
ギュッと両手を握られて、期待を込めたキラッキラの瞳で見つめてくる。勢いがすごい。断れない。
「わ、わか……た。リサリア……さ、ちゃ…ん?」
「呼び捨てで!呼び捨てにして!特別な感じで!」
エランは面白そうにリサリアを見ながら、コーヒーを飲んでいる。
「副団長、必死すぎない?」
「うるさいわね!なんでエランが1番親密な関係になってるのよ!私のひかりちゃんよ!?」
「そう言われても〜」
涙目でリサリアが、ケラケラ笑ってるエランに言い募っている。
「わ、わかった。リサリアって呼ぶ!ね?リサリアー!」
「ハーイ!ひかりちゃあーん♡」
ひかりに呼ばれて機嫌が一瞬で治った。
だいぶ面倒くさくなってるリサリアだった。




