おでかけ れつごー♪
「ひかりちゃん、お待たせしました。今日の護衛のエランです。よろしくお願いします」
褐色の肌に紅い瞳、銀色のベリーショートの美人なお姉さんが、ひかりの部屋まで迎えに来てくれた。ニコッと人懐こい笑顔を向ける。
「こちらこそよろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀をするとエランはご機嫌だった。
「ああんかっわいー!私は『ひかりちゃん護衛争奪戦』の勝者なんです!ジャンケン強くて良かったー!」
ノリが良さそうだな。気が合いそう。
「準備はいいですか?お店通りはこっちですよー。しゅっぱーつ!」
「おー!」
遠足の引率の先生みたいなノリで、エランはひかりを連れて行ってくれた。
「騎士団の皆さんも、そこの商店通りはよく利用するんですか?」
背の高いエランを見上げながら、ひかりはトコトコと歩く。ひかりの歩幅に合わせて、エランはゆっくり歩いてくれていた。
「そうですねー。買い物は大体そこですね。オシャレしたい人とかこだわりのある人は、王都まで買いに行ってるかな。やっぱり流行の物は、貴族が来る王都の中心街にあるんですよ。」
「ふーむ。こんなお店あったら良いのにっての何かあります?」
エランは顎に手を置きながら首を傾げて考える。
「そうですねえ…もっと可愛いお店あればいいなーって思うかな?」
「可愛いお店?」
「砦にあるお店は、ほとんどが男女共に利用できるようになってるから、可愛さに全振りしたお店ないんです。
私は可愛い物が大好きだから、癒しが欲しい時は王都まで遠出してるんですよねー。」
エランはボーイッシュな見た目に反して、意外と乙女チックなのかもしれない。
「他の女性騎士さん達も同じ感じですか?」
「んー、みんなそこまでじゃないけど、王都で買った可愛い雑貨をお土産に渡すと喜んでますね。やっぱ癒しは大事ですよ。」
うんうんとエランは噛み締めるように言っていた。
「可愛いものか」
ひかりはハンドメイドが趣味で、手当たり次第やっていた。編み物、刺繍、洋裁、アクセ作り、ぬいぐるみ作り、陶芸、絵付け、アロマキャンドルにフラワーアレンジメント。
節操なくやってたものが役に立つかもしれないとは、人生何が起きるかわからんものだ。
リサリアさんが言っていた「王家に異世界人から引き出せる知識がないと判断される」ようになるには、政治や便利な技術からかけ離れていればいるほどいいだろう。
あったらなんとなく嬉しいけど、なくても全然困らない物ーーー嗜好品や娯楽だ
ハンドメイドで作った可愛い物を飾って、欲しい人には販売出来るカフェとかどうだろう。
可愛い物好きにしか需要ないし、何の技術革新にならない。
日本の料理を世界に広めたいとも思ってないしな。ちょっとしたデザート作れば良いのでは?
潰れないけど栄えもしない。ターゲット層を限定してるから広まらない。
とっても良い案な気がする。帰って2人に聞いてみよう。
ちょっとだけ方向性が決まりそうで、ひかりはウキウキと商店通りへ向かった。




