美の化身が現れた!
王城へは馬車で行く。前回乗った荷馬車ではなく、貴族が乗るような装飾が施された馬車だ。
馬車までの道のりを、謁見用の騎士服を着たリサリアがエスコートをする。
手を差し出す姿に、ひかりはポーッとなっていた。
「さ、ひかりちゃん。どうぞ」
「リサリアさん、かっこいい!素敵!!」
「うふふ、ありがとう」
リサリアは、長い金の髪を深緑のリボンで、後ろに一つに結んでいた。
白い騎士服に、金糸で美しい縁取りをされた深紅のマントを纏っている。
服はスラリとした手足にピッタリと沿っていて、物腰柔らかな麗しい男装の麗人のようだった。
王子様がここにいる!男装の麗人って現実にいたんだ!
ひかりは完全に目がハートになっていた。
「ひかりちゃんも毒牙にかかってるわね」
「アレには免れないでしょ」
通りすがる女性騎士たちは、苦笑いをしている。
リサリアの騎士服姿は、貴族女性からも絶大な人気を誇っているのだった。
「ああ、ひかり、リサリア。用意は出来たか?」
ガルドが馬車の前で待っていた。
ダークブロンドの髪をきちんと撫でつけ、深紅のリボンで後ろに一つに結んである。前髪をあげていて、精悍な顔立ちがいっそう際立っていた。
リサリアと同じ色の、謁見用の騎士服にマントを纏っている。しなやかで逞しい体に手足は長く、背筋も伸びていてとても美しかった。
ひかりはポカンと見つめた。
美の化身かな?
どストライクな美青年が、そこにいた。
「ドレス、とても似合っているよ」
ガルドは、美しく着飾っているひかりの姿を見て優しく微笑んだ。騎士服で微笑む姿が眩しい。
ひかりは、さっきまでリサリアと笑って歩いていたのに、ガルドを見てから微動だにしない。
ガルドの琥珀色の瞳を一瞬だけ見つめると、ひかりはスッと目を逸らし、リサリアの後ろに隠れた。
「ママ、知らない人がいます…」
「あらあら、人見知りしちゃったみたい。ごめんなさいね、ガルド」
「え?!ひかり、何で?!」
馬車に乗っている間も、ひかりはガルドを直視出来なかった。
ヤバイヤバイヤバイイケメン過ぎる
謁見前にこんな動揺いらないんだよ
騎士服パワーすごくない?
どうしようすごい見たい
いや他に考えることあるでしょ
王様に話すこと考えなきゃ
でもそこに美の化身いるよ見たい
どうしようどういうことなの
ひかりは一見静かだったが、心の中は暴風吹き荒れて動揺していた。
チラチラと見ても、ガルドと目が合いそうになると瞬時に逸らした。
「あの、ひかり?」
「はい」
「何でこっち見ないんだ?」
ガルドさんの生え際を見る。ここならギリ見れる。
「見てますよ?」
「いや、どこ見てる?」
お気に召さなかったようだ。全身全霊で目力を緩める。
「見てますよ?」
「焦点合わせてないよな!?」
わがままだなあ、ガルドさんは。
ぼやけてても顔の良さはわかる。やめてほしい。
「ヤダな〜気の所為ですよ」
「もうガルド、気にしすぎよ。どうしたの?」
リサリアは、困惑した顔で首を傾げた。
なぜだか、とてもわざとらしい。
「いやいやいや!」
ひかりの突然の謎行動に、ガルドは混乱していた。




