本当のひかり
朝、ひかりは、ぼんやりと目を覚ました。
ゆっくり起き上がるも、身体に違和感を感じる。
――なんか…フラフラする?
再び布団に倒れ込む。
起き上がれず、ぼーっとしていた。
「おはよう、ひかりちゃん…?」
「おはようございます…」
リサリアが、朝の鍛錬から戻ってきた。
ひかりは、身体が怠くて弱々しい声しか出なかった。
「!? ひかりちゃん、顔真っ赤!」
リサリアは慌ててひかりに駆け寄り、額に手を当てる。熱い。
「すぐ冷やしましょう!待っててね!医師を呼んでくるから!」
バタバタと音を立てて、リサリアは部屋から出ていった。
「あー…環境の変化のストレスか…知恵熱かなぁ」
ひかりは、ぼんやりしながら苦笑した。
昨日は取り乱してしまった。
リサリアさんとガルドさんに、ボロ泣き姿を見せてしまって恥ずかしい。
でも、泣いたら少しスッキリした。
隠さなきゃと押し殺していた感情を出せて、良かったのだろう。
元来、ひかりは1人の時は、雑でだらけるタイプだった。お淑やかでも何でもない。
気にかけてくれる人たちに、心配させないようにちゃんとしなきゃ、生活に慣れなきゃと気を張っていた。
本当の自分を隠していたら、そりゃストレスも溜まるよね。
「あーあ…面倒くさいなあ…」
熱で体が怠くて、何もかも投げやりな思考になってしまう。
――囲われるとか意味がわからない。謁見とか嫌すぎる。私はただの一般庶民だよ。もう、この世界での悩み全てが面倒くさい。逃げたい。
「ひかりちゃん、連れてきたわよ!」
リサリアが連れてきた医師は、素早く診察をした。
ひかりに、熱を下げる飲み薬を飲ませてくれた。
「疲れが出たようですね。数日は、安静に過ごしてください。後で数日分の熱冷ましを持ってきます。熱が下がるまで、毎回食後に飲んでください」
「はい…ありがとうございます…」
「私が残りの薬をもらってくるわ。いいかしら?」
「はい。では参りましょう。」
パタンと扉が閉まり、ひかりは小さく息を吐いた。
……どうしようかなあ……。
ずっと聞きたいことが一つあった。
目を逸らしていたけれど、向き合わなきゃいけない。
ここに来てから、目まぐるしく過ごしていたけれど、今は考える時間がたっぷり出来た。
「うー…嫌だなあ…」
現実を見るの、面倒臭い。
ひかりは熱の怠さに流されて、現実逃避するかのように眠りについた。




