隠された事実
「王家の言い伝えでは、異世界人に無理矢理知識を言わせ続けた国は、栄えるどころか破滅したとあるらしい。囚われた異世界人は、破滅の知識をわざと教えたんだ。
他にも、逃げないように異世界人を牢へ入れた国があった。異世界人は正しい知識を与えず、そこから救ってくれた国には強大な知識を与え、牢に入れた国を滅ぼさせたという記録もあるそうだ。
異世界人は守れば富を、害すれば破滅を渡すと言われている。だから、快適な暮らしをしてもらい、他国へ逃げたいと思わせないようにするんだそうだ」
ガルドは、ひかりの表情をさりげなく見ながら話す。
ひかりから、国を揺るがすような『異世界の知識』は一度も聞いたことがない。
本人は知識がないと言うが…もし持っていたら、王家にとってかなり重要な存在になるだろう。
「破滅を渡すって……」
物騒な話に、ひかりは戸惑っていた。
破滅をもたらす知識って何だろう。私にそんな知識あるとは思えないけれど………。
ふと、ガラス扉の向こうで司書が本を抱えて歩いてる姿を見かけ、自分がいた世界の日常生活を思い出した。
老若男女、いろんな人間が車や電車に乗り、移動する。空には飛行機が飛び、海は船で渡れる。
ビルが建ち並び、情報が簡単に手に入る時代。
古い歴史も、新しい情報も、噓も真も溢れかえっていた。
私が学生の時に学んだ、常識と思われる学習内容。
ーーーその知識はこの世界では普通?
この世界は、いまだに剣と馬車を使っている。文明はあの世界より低い?
それに気付いて、背筋がゾッとした。
迂闊に話せば、私もどこかに破滅をもたらすのでは?
生活を向上させる為に発明したものが、戦争に使われたなんて話もあったよね……?
「あの……どんな風に破滅したのですか?」
おずおずとガルドに聞いてみると、彼は首を振った。
「詳しくはわからない。異世界人の話は、昔から民衆におとぎ話のように伝わっているんだが、祝福を授けられて幸せになる話ばかりなんだ。
ーーこんな話は、聞いたことが無かった。
陛下からの書状で、初めて知った」
ーー異世界人は、悲しみの涙を川に落とす。周りの全ての命と共に泡のように消えていったーー
「確かこんな話だったかしら。かなり昔の記録にあるって書いてあったわね」
「そ、そうなんですね……」
それって比喩では?
川に毒を流して周囲の環境破壊して、道連れにしたのでは?
医療が発達してなかったら、てきめんに効果あったんじゃ?
もし、専門知識を持つ人間が復讐に燃えたらやりそう。
ーーーー待って。なんで、そう思うの?
ひかりは、自分の思考に慄いた。
すぐに、どういう殺戮方法をやったのか想像できてしまった。
殺戮方法を、知っていたのだ。




