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異世界では小さいねと可愛がられてます  作者: とりとり


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守られる世界

ひかりとリサリアは砦の書物が集まっている書庫塔を訪れていた。砦で暮らし、騎士団で働く人達に必要な知識をここで学べる。

この世界について勉強したいと、ひかりは連れてきてもらった。


飾り気のない建物だが、頑丈な作りで何階まであるのか、随分と高さのある塔だった。

リサリアが司書と話してる間、ひかりはキョロキョロと周りを見た。


不思議…文字が読める。


本棚の目の前に立ち止まり、本を見る。

「薬草図鑑」「食料保存方法」「宴のしきたり」と背表紙に書いてある題名を理解出来ていた。


あ、あれは普通の料理の本?

見上げた先にあった「調理の基本」に手を伸ばした。


「くっ悔しい…!」

プルプルと手を伸ばしても届かない。元の世界では本棚の本に手が届かなないなんてなかった。


踏み台はない?

周りをキョロキョロと探すが見つからない。


一回飛んで引き抜いてやる!


ピョンと飛んで指で背表紙を触るも動かせない。

「背が低いって大変だなあ」


もう一回っと飛ぼうとしたら、スッと本が取られる。

「こら、図書塔で暴れるんじゃない」


ガルドがハイとひかりに本を渡す。

「あ、ありがとうございます」


いい大人が飛び跳ねてるのを見られてしまったーー

ひかりは恥ずかしさにほんのり顔を赤らめた。


実際は子供が届かない本を一生懸命取ろうとしてる姿にしか見えず、微笑ましかった。


「あら、ガルドが図書塔に来るなんて珍しいわね」

リサリアが話を終えて、ひかりの元に戻ってきた。

「ああ、ちょっと話が出来るか?ひかりも一緒に」


3人は、図書塔の3階にあるテラスへ行き、テーブル席についた。人気がなく鳥の声がたまに聞こえる程度で、柔らかな日差しが差し込みゆったり読書が出来る空間だった。


「王城へ謁見に行く日程が決まったんだ。リサリアはひかりの謁見の準備を頼む。」

「わかったわ。正装用ドレスね。」


リサリアはすぐさまどんなドレスを着せて行こうか考える。可愛い系かしら、ちょっぴり大人っぽいのがいいかしら。


「あの、リサリアさん、年相応でお願いします」

「ええ〜?」


ひかりは服を買いに行った時を思い出して、悪寒がした。フリルヒラヒラ…レースたっぷり、大きなリボン…あの格好だけは阻止しなければ…。


不満気のリサリアに、危なかった…と胸を撫で下ろす。


「ひかり、王城では陛下の他にも王族に会う。宰相や他の高位貴族の当主とも顔合わせする事になるだろう。」

「ええっ。」

ひかりはそうそうたる人物達に青ざめ慄いた。

物語でしか聞いた事ない役職がめちゃくちゃいる!怖い!


「ひかりちゃん大丈夫。私が専属護衛として側から離れないわ」

「ああ、俺も謁見の場にいる。1人で会うわけではないから安心してほしい」

「は、はい……」

不安そうにひかりは頷く。


「…陛下は保護の代わりに異世界人の祝福を求めてくるだろう。元の世界の知識の何を話すか考えておいて欲しい。」

「え…と。でも、私は国に貢献出来るような大層な知識ないですよ。この世界もまだよく知らないし、何を話せばいいか……」


「うん、そうか。なら、それをそのまま伝えればいいだろう。陛下達も無理矢理話を聞こうとはしないはずだ。


『異世界人には保護と自由を』

ーーーそれがこの世界の不文律なんだ。」


実際には、貴族や騎士団に王家の勅命が降りている。

今回は高位貴族当主達と共に陛下に謁見するーーこれで当主だけでも、ひかりの存在が知れ渡る。


本当にひかりを守るためなのか?


王族も貴族も、そうそう優しいわけではないと、ガルドは知っている。


「異世界人ってそんなにいるんですか?」

ひかりは期待を込めた。もし私以外にもいるなら会いたい…。


ガルドはゆるりと首を横に振る。

「今、どれくらいいるかはわからないんだ。国から保護を受けるが、他国に公表は義務じゃない。


異世界人の知識は貴重な物だから、異世界人を他国に奪われないように厳重に隠されてるようだ。


陛下へひかりの事を伝えたら、最重要機密として、砦内で働いてる人間全てに誓約書と戒厳令をしかれた。


ひかりが異世界人だと知る者は砦内にしかいないし、この先それを口外する者は出ない。」


「……!」


ひかりは驚きに息が詰まった。

保護という名目で囲われたという事だ。自分の存在が想像以上にこの世界では重い。


「自由って……どのくらいの物なんですか……」

心臓がどくどくと早く打つ。怖い…自分はこの先どうなるんだろう…。


「ひかりちゃん心配しないで!私が守るわ!私もガルドもこれでも高位貴族だから、意見通せるもの。息苦しい生活なんてさせないわ」


リサリアは不安に震えるひかりの背に優しく手を置き、慰める。


「ああ。安心してくれ。俺もひかりを守る。自由行動への制限なんてさせない」

ガルドはひかりを安心させるように頷いた。




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