異世界へ
太陽が落ち始めてもうすぐ夕方になる演習場では、騎士団員達の鍛錬が行われていた。
剣のぶつかる音が響く中、演習場の中心に眩い光が現れた。
「なんだ!?」
騎士団員達に緊張感が広まり、光に注目していた。
輝きの中からふわりと現れたのは、黒髪の少年のようだった。
ふ、とひかりは目を覚ます。
「……え……?」
ひかりは呆然と立ち尽くす。
布団で寝ていたはずなのに、校庭のような広い場所にポツンと立っている。
周りには大勢の外国人。それも剣を持っている。
「な、なに?どこ?」
キョロキョロと辺りを見回す。
ジャリッと裸足の裏に砂の地面を感じた。
ドクドクと鼓動が早くなる。
オロオロと周囲を見て怯えている少年に、団員達は困惑していた。
「……子供、か……?」
見たことのない服装。見慣れない色の髪と瞳、小柄で華奢な体つき。顔立ちは幼く、害があるようには見えない。
背の高い男女が2人、一歩ずつひかりの前に進み出る。
「……君は……?」
低く落ち着いた男性の声が演習場に響く。
ひかりは二人の背の高さに思わず後ずさり、目を大きく見開く。
「え、えっと……わ、私は……」
何が起きているのかわからない。
緊張で声が震える。
剣を持ってるのが見えて、カタカタと身体が震えた。
2人は少年を観察する。
敵意も何も感じない。明らかにか弱く見えるその姿は、まるで子猫が恐怖で震えてるようだった。
周囲の騎士たちも驚愕していたが、二人の落ち着いた様子に静寂が生まれた。
女性が剣をしまい、ひかりの前にしゃがみ込む。
柔らかい声で話しかけた。
「……ねぇ、どこから来たの?」
小さく身を縮めたひかりは、女性を見つめる。
綺麗な金色の髪に淡い水色の瞳。顔立ちもとても綺麗で、モデルさんのようだった。
こんな人に出会った事もなく、日常とはあまりに違う光景に頭の中がぐるぐると混乱する。
「ここ……どこですか……?」
ひかりは小さく弱々しい声で呟く。
女性は手を差し伸べ、ひかりの手を優しく包み込んだ。
「大丈夫よ、怖がらなくていいの。ゆっくりでいいから教えて。どこから来たの?」
その温かさに、ひかりは少しだけ安心した。
けれど、周りの騎士たちや背の高い男性の持つ剣を目の当たりにして、まだ恐怖は収まらない。
「わ、私は……自分の部屋で寝ようとしてただけで…」
恐怖と混乱で女性の質問に、ひかりはうまく答えられない。
どうしよう、どうしようーーーー
ひかりの瞳は潤みだし、泣き出しそうになっていた。
静かに風が吹く。都会の香りではない。土と緑の香りがした。




