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清楚なお嬢さん

日がうっすらと落ちていき、空が赤く染まり始めた頃、砦では演習が終わり、騎士団員達が汗を拭きながら帰り支度をしていた。その頃、ひかり達は馬車で砦へと戻ってきた。

リサリアはひかりを連れて演習場にいるガルドの元へ向かい、元気よく声を上げる。


「ガルドー!帰ってきたわ。荷物があるから団員達に運ぶの手伝ってもらうわよ」


リサリアの声にガルドや騎士団員達はそちらへ視線を向け、目を見開いた。


今朝いたあどけない少女だったひかりが、清楚な女性に成長して戻ってきた。


「え?誰?」

「嘘でしょ?朝の女の子?」

「異世界人って時の流れ違うの?」


別人かと思うが、ひかりの黒目黒髪はこの国では珍しくそうそういない。


「ひかり…すごく綺麗だ。」

ガルドが驚いてじっと見つめながら褒める。


ひかりは男性にそんな見つめながら褒められるのは初めてで、顔を真っ赤に染めてしまった。


「あ、ありがとうございます…」

静かに恥じらう姿は可憐で、騎士団員達は視線を逸らせない。


「うんうん、そうでしょう。ひかりちゃんは可愛くて綺麗なのよ。」

リサリアは深く頷き、誇らし気にひかりの姿を見ていた。


「副団長!俺、荷物運び手伝います!」

「俺も!」

リサリアとひかりの前に若手の騎士団員達が一斉に群がってきた。

間近で見るひかりは小柄で華奢で、こちらを上目遣いで見上げる姿はとても愛らしかった。

思わずゴクリとする団員達にリサリアは冷たい気配を飛ばし、ニッコリ笑いながら穏やかに話す。


「あら、ありがとう。馬車は向こうよ。速やかに私の部屋に運んでくれる?」

にこやかな微笑みの背後に、威嚇する魔獣のような凄まじい迫力が漂っていた。


この娘に手を出したら処されるーーーー本能が訴える。


「わかりました!任せてください!」

顔を真っ青にした団員達は、馬車に向かって猛烈なダッシュを繰り出した。


「さすが、団員さん達は動きが早いですねえ」

走り去る団員達を見てひかりは呑気な事を言っている。自分が可愛いから狙われているなんて微塵も思っていない。


そもそもこの騎士団にいる男女は、背が高く、鍛え上げられた肉体美の美男美女ばかり。自分はちんちくりんに感じてしまう。


男の子に間違えられるくらいには、女性としての魅力が足りないのだろう――


そう思うのも無理はない。大人っぽい美女がいっぱいなのだから。


ひかりは向こうの世界では背の高い女性で、可愛く振る舞うのは小さい子がやると可愛いよね〜と「見る専門」だった。男女の駆け引きも面倒くさくて興味はなく、恋愛に関しては果てしなく疎かった。


さらに28歳という年齢もあって、若い子たちがわざわざ自分を恋愛対象として見ることはないだろうと思っていた。


――つまり、ひかりは完全に隙だらけで無防備だった。


さすがひかりちゃん……無垢で可愛くて愛らしい天使ね!

全くわかっていないひかりの純粋な呟きに、リサリアは内心絶賛した。しかし同時に、危機感を強く覚えた。これでは悪い男に簡単に攫われてしまいそうだ。


隣のガルドに視線を送ると、彼もまたひかりを見つめながら険しい顔で眉を顰めていた。

「ガルド、気付いてる?」

「……ああ、そうだな。早急に対策が必要だな。」


2人の難しい表情に、ひかりはキョトンと首を傾げるだけだった。



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