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異世界では小さいねと可愛がられてます  作者: とりとり


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ガーランドと魔法談義

ひかりは、侍女に連れられて控え室へ向かっていた。


エリンシアさんとヘスティア様に守ると言ってもらえた…なんか、すごく頼りになるお母さんみたいだったな。


ひかりは安心感で、悩みも和らぎ足取りも軽かった。

ふと横を見ると綺麗な花々が咲いている中庭に人影が見えた。


「おや、ひかりさんじゃないですか」

「あっ、ガーランドさん」


魔法使いのようなロングケープを着てサラリと美しい銀髪を靡かせている男性。

魔塔主のガーランドがこちらを見て微笑んでいた。


魔力枯渇で言葉が通じなくなって、パニックを起こした時に助けてもらった以来だ。


ひかりは侍女に了承を得て、ガーランドの所へ行く。

花が咲き誇る中で柔らかなお日様が、ガーランドを照らして、とても美しい姿だった。


「身体の方に異変はないですか?」

「はい。おかげさまで。あの時はお世話になりました。あの、ガーランドさんに教えていただきたいことがあったんです。伺ってもいいですか?」

「ええ。もちろん構いませんよ」


ガーランドは、ひかりの言葉に目を輝かせた。

異世界人をずっと調べているガーランドは、ひかりの疑問は何かとワクワクしながら待った。


「以前いただいた日本語用のこの世界の辞書ですけど、私も作りたいんです。

勝手に魔法を使ってるのを止めることって出来ますか?文字を書いても、日本語は勝手にこの世界の言葉に変換されちゃうんで書けなくて」


昔の異世界人が作った日本語訳の辞書は、形状が巻き物の上に達筆でちょっと読みづらい。

ひかりは本の形に書き換えたかった。


「なるほど、魔力制御ですね。練習すれば出来ると思いますけど、魔道具を使ったほうが早いですね」

「あるんですか?」

「ええ、ありますよ。今度送りますね」

「わあ!ありがとうございます!」

「出来上がったら、複写させてもらっても良いですか?」

「もちろんです!」


二人はお互い、嬉しそうにニコニコと微笑んでいた。

ガーランドは見た目の若さに反してのんびりとした話し方で、まるで孫の話をおじいちゃんが優しく答えているような穏やかさだった。


「あの辞書を作った方は、他の魔法も上手に使えたんですか?」

「ええ。魔力枯渇を何度も起こすくらいですからね。多彩な魔法を使えたらしいですよ?」

「良いなあ。私もいろんな魔法使えるようになりたかったな」


ひかりは他の魔法は使おうとするとコントロールが効かないので封印状態だった。

ガーランドはひかりの残念そうな顔を見て、ふむと考える。頭の中で過去の文献をペラペラと捲る。


「…魔法の使い方が、この世界の人間と異世界人では違うようなんですよ」

「使い方ですか?」

「ええ、この世界では簡単に魔法は発動できます。だから発動方法より止める方法を長く学ぶんです。それも、感覚なのですけどね」

「あー…なるほど」


だから自分が魔力暴走を起こした時、助けに来たカーティスに止め方を聞いても「なんとなく?」と言われたのか。


「使える魔法は生まれつき決まっています。種類を増やすことはできません。ですが、異世界人は想像して生み出し増やせたようです。

高度な言語魔法が無意識に常時発動していますし、魔力の使い方の根本が違うのかもしれませんね」

「想像?」

「はい。風を起こすなら動きと乾きを。火を起こすなら燃えるほどの熱さと痛み。水は水の滴り、感触…といったようにそのものを想像すると発動したようです。ただ、かなり精密に想像しないとならないようですよ」

「うーん、難しそうですね」

「そうですねえ。それに自分の魔力量を自覚してないと簡単に枯渇を起こしますから」

「あ、じゃあ止めときます」


ひかりはあっさり諦めた。

憧れるけど、流石に何度も枯渇を経験するのは嫌だ。


「やっぱり、都合のいい話はないですね」

「ふふっそうですねえ」


ひかりのサッパリした考え方にガーランドは好感を持てた。クスクスと笑っていた時に、何かが流れた。城内の空気が微かに変わるのを感じる。


ガーランドはひかりから静かに視線を外す。

ジッと外壁の方を見つめるガーランドを不思議そうにひかりは聞く。


「どうしたんですか?」

「いいえ、何でも…。今日は、王城の魔力の流れを確認しに来たんです」

「あっ、お仕事中でしたか!?すみません。お邪魔しちゃって」

「ふふっいいえ。ひかりさんとはお話がしたいと思っていたんですよ。会えて良かったです。またお話ししましょうね」

「はい!是非」


優しくふわりと笑うガーランドにひかりも笑顔を返した。

ひかりがレオルドのいる部屋へ再び向かう姿を見送ってから、ガーランドは今までとは全く違う冷静な視線で王城を見つめていた。先程のわずかな変化は消え去っていた。


「なんだか、よくないですねえ…」


ガーランドは、ポツリと呟いた。



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