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異世界では小さいねと可愛がられてます  作者: とりとり


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愛されすぎて困るよね同盟

明るいサンルームは、美しい花があちこちに飾られていてとても華やかな雰囲気だった。

静かで穏やかな空間で、ヘスティア王妃はゆったりとお茶を飲んでいる。

そこに扉をノックする音が響いた。


「王妃殿下、エッセン辺境伯夫人とひかり嬢をお連れしました」

「お入り」


レイゼンがひかりたちを連れて部屋に入ると、王妃は立ち上がり二人を笑顔で迎えた。


「よく来てくれたわ。さあ、こちらへどうぞ」

「久しぶりね。ヘスティア!元気そうで嬉しいわ」


エリンシアは王妃へ親し気に話していた。

ひかりは、レイゼンに勧められた席におずおずと座る。


「じゃあ、私たちだけにしてちょうだい」

「はい。かしこまりました。みんな、席を外しなさい」


レイゼンが侍女たちに声をかけて、部屋から全て出すと自身も出ていき一礼をして扉を閉めた。


「さて、ひかり嬢」

「は、はい」


突然呼ばれて、ひかりは緊張した面持ちで返事をする。

緊張はしても、ガルドとアーノルドの母親だなんて思えない美しさの二人が並び、見ているだけでポーッとしてしまう。

エリンシアが妖精なら、ヘスティアは女神だ。


「先日はアーノルドが失礼なことをしました。母として謝罪します」

「! もう済んだことですし、王子殿下は二度としないと言ってくださってましたから大丈夫です。お気になさらないでください」


王妃様直々の謝罪に、ひかりはアワアワと動揺しながら返事をした。

可愛らしい態度のひかりに、ヘスティアは優しく微笑む。


「こんな可愛らしいお嬢さんなら、本当にアーノルドのお嫁さんになってくれたら良かったのに。残念だわ」

「ふふ。アルにもきっといい人が見つかるわ。

ひかりちゃんはガルドから聞いてる?ガルドとアルが子供の頃からの付き合いだって」

「は、はい。剣術の兄弟子と弟弟子だと聞いています」


「私たちは学生時代からの付き合いなの。それでアルは先代辺境伯の剣を習わせてもらえたのよ」

「うちの子供たちがアルを可愛がっていたわ。懐かしいわねえ」


エリンシアとヘスティアは昔と変わらない気の置けない笑顔で笑い合っていた。


なんと、学生時代からのお友達だったのか。

このお二人の10代…めっちゃ可愛かったんだろうなあ。

ひかりは、今も美しい二人の若い時代を想像してポーッとなっていた。


「ひかり嬢、私がお茶会にエリンシアも呼んだのはね、ガルドの話を聞かせたかったからなの」

「ガルドの話ですか?」

「ええ。ガルドの行動、まだそれほどおかしくないかしら?」

「おかしい…ですか?」


エリンシアの質問に意図がわからず、ひかりはキョトンとした。


「私は、レオルドからこんなに分厚い恋文をもらったことがあったわ。ガルドはしてない?」


エリンシアは「こんなに」と指で厚さを表現した。五センチは超えている。辞書レベルの厚さだ。


「懐かしいわね。全部エリンシアへの想いと称賛で、みんなでエリンシア教典って呼んでたわよね。全何巻だったかしら」

「3冊で止めてもらったわ。持って帰るの重いから」


エリンシアはニコニコしながら、夫の常軌を逸した行動を話していた。あと普通にその行動を拒否している。確かに迷惑以外の何物でもない。


「ヘスティアだって、学園の講堂で全学年が集まった総会の時に、陛下にやられてたわよね。

陛下が、いかにヘスティアは素晴らしい人物で愛しいかって演説して。全生徒に牽制したのよ」

「気絶するフリが得意で本当に良かったわ」

「流石に全生徒に聞かれるのは五分が限界よねえ」

「二分よ。あれは耐えられないわ」


二人のあり得ない話を笑って話す姿に、ひかりはポカンとした。

え?陛下とガルドのお父さんってそんなことしてたの?…ガルドのお父さんはしてそうだな。

先程エリンシアに泣き縋ってた姿を思い出して、納得してしまう。


「………あ」

「あら、やっぱりあった?」

「い、いえ、あのその」


演説で思い出した。

ガルドは一度、「ひかりが自分のどこが好きか知りたいとリサリアから聞いた」と言って会議室からひかりの部屋まで延々と愛を語ってくれた。通行人がいるのに止めることなく話してて、死ぬほど恥ずかしかった。


もしかして、アレのこと?

思い出すだけで顔が赤くなる。


エリンシアはひかりの微笑ましい姿にニコニコと笑う。

この一族の愛情を受けて照れるなんて、随分心が広いお嬢さんだわ。とっても優しいのね。


「あらあら、恥ずかしがらずに話して大丈夫よ。そういう家系だから」

「家系ですか?」

「そう。王家と辺境伯家の人間は異常に愛が重いの」

「へ?」


エリンシアとヘスティアの話についていけない。

どういうこと?

ヘスティアは女神のような輝く美しい微笑みをしながら話す。


「この二つの一族に見初められた伴侶候補が現われた時は、当主の伴侶が必ず助けに集まることになっているの」

「対処法を教えてあげないと、ひたすら”重すぎる愛情表現“で恥ずかしい思いをさせられちゃうのよねえ」


エリンシアもちょっと困った様子で頬に手を置いて笑っていた。



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