団長が優しい…!?
騎士団の食堂に向かうまで、ひかりはキョロキョロと興味津々で周りを見ていた。
朝の砦内は、清々しい空気がした。
見回りをしてる騎士もいて、リサリアさんは挨拶をして通り過ぎる。仕事をしてる人、これから仕事をするであろう人があちこちにいる。
この世界の人々が生活をしてる姿が見えて、ひかりは少しホッとした。
現実なのだと実感が湧いてきた。
落ち着いて見てみると、色んな物のサイズが大きいと気づいた。部屋を出る時に触ったドアノブの位置すら少し高めだった。
通り過ぎる人達は皆、背が高い。むしろ自分より低い人に出会わなかった。
「みんな背が高いから、男の人が沢山いるとちょっと怖い」
昔、小柄な友人が言っていた言葉が、今ならわかる。
集まると威圧感を感じてしまって、心がざわつく。
こんな気持ちだったんだ。
しかも、ここの人達は騎士だから逞しくて、まるで壁のようだ。自然に身を縮めてしまう自分がいた。
団員の集団が来ると、ちんまりしたひかりはリサリアさんが手を引いて守ってくれていた。
友人を守るのが当たり前だった自分が守られるのはなんともこそばゆく、同時に安心感が広がった。
リサリアとひかりが食堂へ入ると、そこにいた騎士団員達が一斉にざわめいた。
「あれ?昨日の異世界人の子?」
「え?女の子だったのか?」
「かっわいいな!」
「小ちゃいねえ」
大きめのワンピースを袖まくりして歩いてるひかりは、あどけなさが際立っていた。
騎士団員達の“守ってあげたい”という庇護欲に直撃した。
「あ,ガルド!」
「リサリア、ひかり、おはよう。よく眠れたか?」
「はい」
リサリアに気付くと、ガルドが優しく笑う。
ひかりも笑顔で返事をした。
その姿に騎士団はどよめく。
「団長が、あんな優しい顔を…!?」
「しかもあの子、素直に返事してるぞ!」
子供や貴族女性に恐れられる厳つい団長に、全く恐れず、まるで懐いてるかのような笑顔に団員達は驚いていた。
「じゃ、特別メニュー持ってくるわね!」
リサリアは、笑顔で厨房カウンターに受け取りに行く。
ガルドに隣の席を勧められて、ひかりはちょこんと座った。まだ慣れない食堂の空気に、きょろきょろと周りを見る。
周囲の騎士団員たちは、信じられないものを見るような視線を交わしている。
「団長の隣にあの子が…」
「団長が子供に懐かれてる……幻覚か?」
騎士たちの小声のざわめきがどんどん広がり、ひかりは恥ずかしそうに布の袖をぎゅっと握った。
「……みんな、すごい見てきます」
「気にするな。異世界人が珍しいんだ。すぐに慣れて騒がなくなる」
ガルドが優しく励ますと、彼女は少し安心したように小さくうなずいた。
ちょうどその時、リサリアが朝食を乗せたトレーを持って戻ってきた。
「お待たせ!今日はパンプディングと、蜂蜜入りのホットミルクよ」
「わぁ、美味しそう!」
ひかりは、ぱぁっと笑顔を咲かせて声を上げた。
その無邪気な反応に、周囲の騎士たちがまたざわついていた。
ひかりがふうふうとパンプディングを冷まし、パクリと食べると嬉しそうに頬をほころばせる。
「美味しいです」
「そうか、良かったな」
「口にあって嬉しいわ」
ひかりの穏やかな表情に、ガルドが優しく微笑む。
リサリアも、笑顔でひかりを見守っていた。
多くの団員は食事量が多い。
そんな中で、可愛らしいメニューを嬉しそうに食べているひかりに、団員達はニコニコと見守っていた。
「可愛いなあ」
「あそこだけ世界が違って見えるな」
「となり団長だけどな」
「威圧感が消える程の可愛さ、すげーな」
「ずっとここにいてくれないかなあ」
ひかりの幸せそうに食べる姿は、騎士団員達をほのぼのと癒した。




