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変わらない日々……?

 さて。


 ヤンキー先輩と過ごした海の家でのイベントも終わり、俺は自宅に帰ってきた。が、まだまだ夏休みは続くわけで。


 実家に帰るってのも考えたが、バイトも入れてたし、宴の時に顔も合わせて話もしたからわざわざ戻ることもないだろうと、ひとり暮らしの部屋に戻ってきた。


「今日も暑いですねぇ~……とけちゃうかもですぅ……」

「そうだな……氷菓でも作るか……」


 ひとり暮らし……。


「……(ジロリ)」

「……なんやねん、俺が気に入らんのはわかるけどそんなに熱視線送られっぱなしやと、勘違いすんで?なんつって……っでででぇ?!噛むなやぁ!!」

「もぉー!しののめさんうるさいですです!ただでさえあなたの格好暑苦しいのにぃ!です!」

「いっそのこと引き裂いて……外に放るのもありか?」

「ぇー?!なにこの子たちひどない?!俺今めっちゃ暴力受けとるんやけど?!そこは助けるもんやないの?!小鬼でも神鬼やろ?慈悲!慈悲!んぅあだぁーっ!!」


 ひとり暮らし、とは。


「お前たち……少し静かにする努力ようと思わないの?」


 麦茶片手にリビングの惨状を見ながら呟くが……声が小さすぎたか、無視されてるかわからないが聞いてないみたい。


 いつも通り自由に、ゴロゴロバタバタとしていた。


「……宿題でも片すか」


 大きくため息をついて諦めた俺は、ベッドの横の勉強机に向かう、バイト代で買った、新品の机だ。


 何故購入したかっていうと、流石に同居人(人ではない)が増え、食事も勉強も同じ卓上でするのは厳しくなってきたから……理由は悲しいものだが、新品っていうのは気持ちいいもの。それに、『勉強机』と言うだけあって、ちゃんと勉強モードに体がシフトする。


 なんだかんだ仲良くしている皆の騒ぐ声をBGMにして、夏期休暇中の宿題を進めることにした。


 しばらくして、ふと時計を見ると、午後3時過ぎ。


「ふぁ……ぁ……もう2時間も経ってたのか、我ながらすごい集中力」


 それもそう、いつの間にかBGMか無くなっていたから。

 おかげで後3分の1残して終わってくれたよ、現国だけだけど。


「ったく、騒ぐだけ騒いで寝てるとか幼児かよ……ふはっ」


 振り向くと……騒ぎ疲れた小鬼と小狐さんは狭いリビングの床で東雲を枕に寝ていたわけだ。


 なんだかほほえましくて、安心して、笑ってしまった。


「……なぁにわろてんねん」

「なんだ、起きてたのか?」

「クーラー効いとる言うてもな?こんな暑苦しい状況でスヤスヤ寝られるわけないやろ。子ども体温プラス毛玉が張り付いとるんやで?ボーッとしとらんと布団敷いて移してぇや」


 気を使って、に小さい声で怒る東雲……起こすとまた騒がれるからとか言ってたけど、優しいだけなんだろうな。


 俺との出会いと繋がり方がどうあれ、東雲とはこれから先もずっと一緒にいることになる。

 攻撃的で、お調子者で、ショタで、夜兄信者で危ない奴だと思ってたんだけどなぁ。


「……なんや失礼なこと考えとる……秋くんヒドイなぁ……シクシク」

「そういうとこ、だぞ?」


 いかんいかん、気を抜くと筒抜けになるな。

【筒師】の筒ってこれもあるんじゃないのか?なんて思いながら小鬼達を布団に移し終えると、東雲が問いかけてきた。


「んで?西の方の奴ら来たらどないすんの?」


 忘れてはいないさ。忘れたいけど、命に関わるから「へぇーそうなんだぁ」くらいで終わらせることは出来ない。


「俺、関西弁つこてるけど、別にあっち方面で生まれ育ったわけやないねん、せやからその西の方のことはなーーんにもわからへんからねー?」

「は?じゃあなんで使ってるんだ?」

「なんでって……あれや、設定みたいなもんちゃう?あ、それと俺の出生に関しても教えられへんからな?」


 何時になく鋭い目つきを見せる東雲。


「設定とか急に怪しさ出すなっつーの!ったく……そんなこと言われなくても無理に聞いたり覗いたりしねぇよ。それに、昔のこととか出生とかも、知ろうが知らまいが、俺の知る東雲は今、目の前にいる東雲だろ?それでだけで充分」

「秋くん……惚れてまうわぁ」


 キラキラした目で見るんじゃない気持ち悪い!俺は俺の思うことを言っただけだってのに。


「話脱線したけど、西の方の事なんて俺も知らん!俺になにか仕掛けてきたとしても東雲が守ってくれるもんな?」

「当然、守ったる……任せとき~?」


 ニンマリと嬉しそうに笑う東雲……俺の命は託したぜ?


 とはいえ……少しは俺も対抗出来るくらい………いや、せめて護身術みたいなのを身に付けておいても損はなさそうとは、ちょっと思ってる。


「よし!たまには俺がおやつ作ってやるかぁ!さっき砂鬼が氷菓とか言ってたよな……多分、かき氷だろ……?シロップとか用意してあるか……?東雲~準備するから良いところでそいつら起こしてくれ〜」

「ええでぇ~!あ、俺レモンが好きやねん!よろしゅう~!」


 よく寝ている小鬼達を背に、俺はかき氷を作る準備をする。

 明日からバイトも詰め詰めで入れてるからゆっくりできる時間もそんなにないし、夏らしいこともこれくらいしかできないからな。


 ルンルン気分で俺は、氷をザッガザッガと大きな音を立ててボールに移す。


 氷を削りながら俺は思う。


 2学期からは……いや、2学期からも、少しばかり騒がしいだろうけど変わらない、つつましく生活できる日々が続くことを。

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