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おは妖怪

小さい頃の夢を見た。

実家の広い庭で鬼ごっこをして遊んでる夢だ。誰と遊んでたんだっけか…人…?妖怪(ようかい)…?顔がぼやけてわからない…なにか言っている…。


「……鬼!……―っても…いっしょに……ね!」

『あぁ、約束しよう。』


―息苦しさがふっと無くなり、目が覚めた。なにか大切な約束?してた?うーん、思い出せん。ぼやけてたけどあれは妖怪(ようかい)ぽかったな。しかも鬼?鬼と鬼ごっことか…ほんとうになにしてんだ俺は。少し気分が悪い。こんな夢を見たのはきっと昨日の小鬼どものせいだろう。


そう、今まさに寝ている俺の上で絶賛(ぜっさん)ダンス中のな…。


「ちーちー♪」


「みーみー♪」


はい、ワンツーワンツー…じゃないわっ!朝っぱらから最悪だ!


「こらっ!どけ!」


バサッと勢いよく布団をはがして起き上がると、コロコロと回転しながら2匹同時に壁にぶつかった。両方とも目を回したのか、よたよたしている。そう言えば昨日エプロンのポケットに突っ込んだな…出待ちしてた壱弥(いつみ)のせいもあって忘れてた。無意識にエプロン持ち帰ってた俺、えらい。でもとろけた『みー』はともかくとして『ちー』の方はどうやってここに?なぜか知らんが『みー』も元に戻ってるし。


「あれ?秋緋(あきひ)気づいてなかったんだ?昨日の帰り道、かわいいの頭にのせて歩いてるなーって思ってたんだけど?あ、おはようっ!」


「色々ありすぎて疲れてたんだよ!あと挨拶をついでみたいにするな!おはよう!」


「あははこわーい!しかも怒るところそこじゃないよねー。」と、小鬼に話しかけながら、どうやって入ってきたのかわからない壱弥(いつみ)はパンとコーヒー片手に俺の部屋で朝食をとっている。まじでなんでなの?


「へぇー秋緋(あきひ)この子助けたの?しかも霊力(れいりょく)までくれて。あんなに妖怪(ようかい)とはおさらばだとか言ってたのにやっぱり優しいんだねぇ。」


おいちょっと待て。俺はそんなことをするつもりは全く無い!助けたというよりはバイト先から追い払う為だ。しかも霊力(れいりょく)をあげた?いつ?!




……



…あれか、あの息苦しさか。『ちー』の奴、俺の顔に『みー』を乗せやがったな?それで口から搾取させたな?くち…から…?『みー』の方を見つめると、恥ずかしそうに赤らめながらクネクネしだした。

俺は激しく項垂(うなだ)れた。


あわよくば、この高校生活で彼女をつくってキスとかしちゃったりとか考えてたりしたのに…まだ始まって24時間経つか経たないかぐらいでそんな…。


「大丈夫、妖怪(ようかい)は数に入らないよ。あれ?聞いてる?」


壱弥(いつみ)がなにか言っているがもうしらん、もうやだ…。新生活にうかれていた俺がバカだった…。これも全部俺の家があんなだからだ…。


「(うーん。色々ありすぎたから秋緋(あきひ)の中の力の循環(じゅんかん)が乱れてるみたい、このままじゃまずいかなぁ…仕方ないなぁ…)」


寝巻きのまま俺は体育座りで隅っこでぶつぶつと愚痴(ぐち)っていると「いつまでもそうしてないで着替えてさ、少し早いけど学校にいこ。歩きながら今の状況とか整理しよ。」と、言ってきた。


確かに慌ただしく、俺がひたすらツッコミをいれて1日が過ぎてしまっていたから、色々と整理した方がいい。壱弥(いつみ)に言われた通り制服に着替えて家を出た。

歩き始めてから気付いたが、ポケットにしっかりと小鬼が収まってる上に、壱弥(いつみ)からパンをもらったのかおいしそうに食ってる。俺、朝飯抜きなのに。

登校時間にはまだ1時間以上時間があり、他の生徒の姿はなかった。それにまだ少し肌寒い。上着着てくればよかったな。黙って歩いていたのは数分、壱弥(いつみ)が口を開く。


壱弥(いつみ)沙織里(さおり)は【筒師(つつし)】見習いで、俺の親父がこっちの学校で講師と5年契約の別件の仕事があり、修行をするのに親父がいないとできないからギリギリで後期試験を受験し、本当にたまたま同じになっただけ。

俺がここに入ることになったのを知ったのは中学校の卒業式の後だったそうだ。…この時期俺は壱弥(いつみ)に一回電話したくらいで親父も避けて引っ越しの準備とかしてたな。電話した時ちゃんと壱弥(いつみ)の話聞いとけばよかったわ…。


壱弥(いつみ)に親父がなぜ俺に言わなかったのかを(たず)ねたら、俺が入学や入居のための書類のサインを親父に頼んだ時、「この間跡継ぎにならないとか言ってたてついたくせに、バカ正直に親に頼んでくるとかまだまだ子供だな、まじウケル。でもちょっとムカついたから黙っとこー♪」ってなったらしい。女子高生ノリかよ…。


まぁ、落ち着いて考えたら俺の詰めが甘過ぎたとしか思えない。こいつらはこいつらでちゃんと先をみてて、将来考えて行動しただけだもんな。けど、俺も俺で将来を考えて行動したわけで、夢を諦める訳にはいかない。できればあまり関わらないでほしい、と壱弥(いつみ)に言った。


「それができればいいんだろうけどそうもいかないと思うんだよね……ちょっといいかな?」


そう言うと壱弥(いつみ)は足を止め、(かばん)の中から1本のボールペンを取り出した。

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