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紅い衝撃①

 GW(ゴールデンウイーク)最終日、明日の準備を終えくつろいでいたら、合宿から壱弥(いつみ)が帰還(きかん)し襲来(しゅうらい)、日付が変わるまでしゃべり続けてくれた。

 おかげで最悪のラストを迎え、翌朝は言いようのない倦怠感(けんたいかん)を感じたまま登校した。


「あーちゃん顔色悪いよ?今日暑いもんね、大丈夫?」


 全体集会へ行くため、体育館への移動中沙織里(さおり)が「また、する?」と、止めのひと言まで添えて話しかけてきてくれた。

 無意識(むいしき)なのかわざとなのか……なかなかに刺激的(しげきてき)な事を休み明け早々に言ってくれたもんだ……そんな風に感じるのは、夏服への衣替えをしていたせいもあるかもしれない。

 さわやかな、透け感のあるシャツが……ね?


「僕はわからないけど……ねぇ、顔、下品(げひん)だよ」


 またこいつは心の声を読みやがって……。

 全校生徒が体育館に集まったことを確認し、教頭先生が登壇(とうだん)してマイクに声を乗せる。

 スピーカーから声が聞こえ始めると、ざわつきが少しずつおさまっていく。


「あーあーえ~皆さん、おはようございます。GW(ゴールデンウイーク)は大きな事故の報告もなく――」


 お決まりの挨拶で集会が始まった。

 なぜ、新学期(しんがっき)でもないのに集まったのかはもうわかっている……俺の親父が来るからだ。

 教員免許(きょういんめんきょ)を持っていたのにも驚いたが、この学校に来るってことの方が驚きではあった。

 しかし、壁際でイスに座っている先生たちの中に、親父の姿は見えない。

 やっぱりやめたのか?それならそれで俺はありがたいが。


「え~それではぁ……本日より我が校の教員とし2名の先生がぁ来ておりますのでぇご紹介します」


 ふたり?そういえば、親父に気を取られて気付いていなかったが、見たことの無い金髪の女性がいる。

 モデルのような歩き方で登壇(とうだん)し、マイクを取って話始める。


「皆サン、初めまして!外国語特別選択授業《がいこくごとくべつせんたくじゅぎょう》、専任教師(せんにんきょうし)藻江島珠子(もえじまたまこ)です~!専任(せんにん)なんて言ってますが、2-Cの副担任(ふくたんにん)もするからみんな遊びに来てネ!」


 生徒達からキレイ!とか外人?ハーフかな?とか、彼氏いるのかな?等々……ざわめく声がそこらじゅうから聞こえる。

 俺はツッコミたくて仕方なかったが、壱弥(いつみ)が「わかるけどやめておいた方がいいよ、次があるから」と言った。


「私と一緒に来たもうひとりの先生を紹介しまーす!後ろに注目でっす!」


 恐らく、段取りをしていたのだろう……藻江島(もえじま)先生が生徒たちの目線を後ろの出入り口へと誘導する。

 両扉が勢いよく開き、逆光の中に人影が見える。

 カッカッカッ……っと、地面……この場合は体育館の床になるが、靴が軽快(けいかい)に床を叩く音を響かせながら体育館の中央堂々と歩く……影だったそれは段々たる姿を現した。

 一言で言うとそれはね、バケモノ。

 どんなかって?そうね、髪の毛は……地毛だ、今はおろしてるみたい、普段はくくっている。

 あとは白衣……白衣着てる。

 え?それだけじゃ普通?

 ……とても鮮やかな赤色をした、体のラインがきれいにでちゃう丈の短いパツパツのワンピースに、真っ赤なハイヒール、ピンヒールかな?聞きなれない靴音はこれだったわけだ。

 あ、お化粧もバッチリきまってますねぇ……某2丁目かな?


「どう?秋緋?ツッコミがいがあるでしょ?僕はもう慣れたけどね」


 慣れたなんて言っているが目はどこか遠くを見ているぞ。

 直視したくないのはお前だけじゃないからそこは安心しろ……他の生徒からも悲鳴だかなんだかわからない声が上がってる。

 阿鼻叫喚の中、『それ』は壇上に上がっていた。


「はーい!みっなさぁーん!歴史学特別選択授業《れきしがくとくべつせんたくじゅぎょう》と、保健室の先生を担当する、ルージュ加宮(かみや)よ~ん!珠子ちゃん共々よろしくねん?」


 バチコーンッ!てウィンクすんなっ!なんだその名前!ルージュ?!ルージュ加宮(かみや)?!誰?芸名!?


「加宮は旧姓だね、ルージュは名前から取ったのかな?はは、先生さすが」


 目が笑ってないよ?……壱弥(いつみ)はこんなになってるけど、沙織里(さおり)はどんなリアクションして――あ、すごいキラキラして見つめてるわ……憧れって盲目(もうもく)なのか?


「体調崩したり、ケガしたりしない方がいいけど……もしなったら先生がちゃんと診てあ・げ・る。」


 今にも倒れそうな生徒が数多くいるのがあからさまにわかるが、必死に耐え、堪(こら)えている……そりゃそうだろうな。

 というか、誰が採用したんだ?明らかに教育上問題がある人物だろ、先生達はなんでそんなに普通なんだ?

 うっかり、親父?と目が合った……合わせたくなかったけど……あれ、笑った?

 ニヤリと笑ったような気がしたその瞬間、なにかが俺の頭に刺さった。

 あ、これはやったなってわかった。

 だって、意識がなくなっていくんだぜ?立っていられるわけもなく、見事にぶっ倒れてしまった。


「あらぁ!大変早速お仕事ぉ?!」


 白々しい……薄れていく意識の中で親父?の気持ち悪い声とヒールの音が近くのはわかった。

 文句を言いたかったが、残念ながら……俺の意識はここで途絶えた。

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