時間が戻せるスマホ
「え? 時間が戻せるスマホ?」
俺は思わず聞き返した。
「そうだ。ただし、時間を戻すといっても僅かな時間だ。せいぜい1分くらいだな」
「たった1分、時間を戻したところで何が嬉しいのさ」
「例えば、キミが彼女と初めてベッドを共にして抱き合っているとするだろ。やがて彼女が充分に感じた頃合いを見計らって、キミは絶頂を迎える」
オブラートに包んだ表現、サンクス。
「そして、それからキミはだいたい1分後に賢者タイムに突入するわけだ」
「時間を計ったことは無いけど、まぁ大体そのくらいの時間かなぁ」
「そこでキミはこのスマホに入ってるアプリ『Tikka Tokka』を使って時間を1分だけ戻すんだ……」
何だかどこかで聞いたようなアプリだな。
ま、この際、アプリ名なんてどうでもいいか。
「すると、どうなると思う?」
「賢者タイムの前に戻れる……と」
「その通り。しかもキミの頭の中からは、時間を戻した分の記憶が消えている。つまり、望むならキミは何度でも、彼女と初めての絶頂を迎えることができる」
オブラートに包んだ表現、二度目でサンクス。
「別の言い方をすると、キミは彼女の中で無限に射精できる」
……あ、やっぱ、さっきのサンクスは取り消しで。
「要するに、無限に快楽をむさぼる事ができるというわけだ」
「なるほど……」
「他には例えば、A5クラスの和牛の霜降りサーロインステーキを一口食べるとする。そしてそれを口の中でゆっくり味わって飲み込む。こたえられない美味さに、キミは満足感で包まれるはずだ」
俺は無意識に、ごくり、と生唾を飲み込んだ。
「そこでこのスマホに入ってるアプリ『Nikka Bokka』を使って時間を1分だけ戻すんだ。するとどうなるか」
いつの間にか、スマホのアプリ名が工事現場の作業着みたいになってんな。
「もう一度、A5クラスの和牛の霜降りサーロインステーキが食べられる、と……」
「いや、一度だけじゃない。これを繰り返せば、キミはA5クラスの和牛の霜降りサーロインステーキを無限に食べることができる。『いきなりステーキ』どころの話じゃない。『いつまでもステーキ』だ」
そんな店、速攻で潰れるだろ。
「どうだい。こんな素晴らしいスマホ、たとえ100万円でも決して高い買い物じゃないはずだ。しかも、それが今なら49万9980円だ!」
細かく刻んできたな、おい。
もうそこは50万円でいいだろ。
「どうだ、買わないか?」
「うーん……」
「これだけ安くしてもまだ買わないって言うのか。このしみったれ野郎!」
なんで急に口が悪くなってんだ、この人。
「いきなり時間が戻せるなんて言われても……すぐには信じられないよ」
「まだ俺の話を疑ってるのか。なら今回だけ特別に、お試しサービスを無料で付けようじゃないか。そしたら効果を実感できて、キミの疑いも晴れるだろうからな」
まぁ無料ならいっか。
気に入らなければ、買わなきゃいいだけだし。
「じゃあ今だけ特別に俺のスマホを貸してやる。ここに『Ryukku Sakku』アプリのアイコンがあるから、それをタップしてみろ」
ん? またアプリの名前が変わってないか?
何だよ、リュックサックって。
ピクニックか。
ま、どうせ買う気なんて無いから気にしないけどさ。
「分かった。こうか?」
言われるがままに、俺はそのアイコンをタップした。
一瞬、頭の中がクラッとするのを感じた……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「え? 時間が戻せるスマホ?」
俺は思わず聞き返した。
「そうだ。ただし、時間を戻すといっても僅かな時間だ。せいぜい1分くらいだな」
「たった1分、時間を戻したところで何が嬉しいのさ」
「例えば、キミが彼女と初めてベッドを共にして抱き合っているとするだろ。やがて彼女が充分に感じた頃合いを見計らって、キミは絶頂を迎える」
オブラートに包んだ表現、サンクス。
「そして、それからキミはだいたい1分後に賢者タイムに突入するわけだ」
「時間を計ったことは無いけど、まぁ大体そのくらいの時間かなぁ」
「そこでキミはこのスマホに入ってるアプリ『Tikka Tokka』を使って時間を1分だけ戻すんだ……」
何だかどこかで聞いたようなアプリだな。
ま、この際、アプリ名なんてどうでもいいか。
「すると、どうなると思う?」
「賢者タイムの前に戻れる……と」
「その通り。しかもキミの頭の中からは、時間を戻した分の記憶が消えている。つまり、望むならキミは何度でも、彼女と初めての絶頂を迎えることができる」
オブラートに包んだ表現、二度目でサンクス。
「別の言い方をすると、キミは彼女の中で無限に射精できる」
……あ、やっぱ、さっきのサンクスは取り消しで。
「要するに、無限に快楽をむさぼる事ができるというわけだ」
「なるほど……」
「他には例えば、A5クラスの和牛の霜降りサーロインステーキを一口食べるとする。そしてそれを口の中でゆっくり味わって飲み込む。こたえられない美味さに、キミは満足感で包まれるはずだ」
俺は無意識に、ごくり、と生唾を飲み込んだ。
「そこでこのスマホに入ってるアプリ『Nikka Bokka』を使って時間を1分だけ戻すんだ。するとどうなるか」
いつの間にか、スマホのアプリ名が工事現場の作業着みたいになってんな。
「もう一度、A5クラスの和牛の霜降りサーロインステーキが食べられる、と……」
「いや、一度だけじゃない。これを繰り返せば、キミはA5クラスの和牛の霜降りサーロインステーキを無限に食べることができる。『いきなりステーキ』どころの話じゃない。『いつまでもステーキ』だ」
そんな店、速攻で潰れるだろ。
「どうだい。こんな素晴らしいスマホ、たとえ100万円でも決して高い買い物じゃないはずだ。しかも、それが今なら49万9980円だ!」
細かく刻んできたな、おい。
もうそこは50万円でいいだろ。
「どうだ、買わないか?」
「うーん……」
「これだけ安くしてもまだ買わないって言うのか。このしみったれ野郎!」
なんで急に口が悪くなってんだ、この人。
「いきなり時間が戻せるなんて言われても……すぐには信じられないよ」
「まだ俺の話を疑ってるのか。なら今回だけ特別に、お試しサービスを無料で付けようじゃないか。そしたら効果を実感できて、キミの疑いも晴れるだろうからな」
まぁ無料ならいっか。
気に入らなければ、買わなきゃいいだけだし。
「じゃあ今だけ特別に俺のスマホを貸してやる。ここに『Ryukku Sakku』アプリのアイコンがあるから、それをタップしてみろ」
ん? またアプリの名前が変わってないか?
何だよ、リュックサックって。
ピクニックか。
ま、どうせ買う気なんて無いから気にしないけどさ。
「分かった。こうか?」
言われるがままに、俺はそのアイコンをタップした。
一瞬、頭の中がクラッとするのを感じた……。
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「え? 時間が戻せるスマホ?」
「そうなのよ。あそこの二人、さっきからずっとスマホのアプリで時間を戻すとか、そういう話を延々と続けてるの。ちょっと気味が悪くって……」
「たぶん、しつこいキャッチセールスにでも捕まっちゃったんでしょ。そんなスマホのアプリなんて、あるはずないのにね」
読んで頂き、ありがとうございました。




