29. 火花バチバチ
レイアはゾフィーの話し相手として、王宮にちょくちょく顔を出すことになった。まあ、昼間の暇潰しにはいいかな、いいかもしれない、いいに違いないとレイアは割り切った。大抵二人でお茶を飲んだり、本を読んだりと穏やかな時間を過ごしている。レイアはゾフィーと過ごす時間自体について苦痛はなかった。ゾフィーもレイアに対して心を開きつつあった。
今日も今日とてレイアはゾフィーの元を訪れた。しかし、ちょっと用があるらしくしばらく待っていてほしいと言伝があり、レイアは大人しく刺繍でもするかと椅子に座った。
「あら、お姉様」
すると、ゾフィーの代わりにフローラがやってきた。上質なレースと目も醒めるようなド派手な紫色のドレス、じゃらじゃらとそんなとこまで宝石を垂れ下げるの?という箇所まで着飾っていた。バチバチにキメてきている。何かあるんですかね。似合っているかは置いておいて、テーマが強欲のコンテストならば最優秀に輝くに違いない装いだ。レイアは心の中で視覚でわかる浅はかさはインパクトがあり、とても素晴らしいと品評した。
「これはね、殿下がくださったの」
ネックレスもイヤリングもドレスもとフローラはウキウキでフローラがレイアに見せつけた。殿下とフローラ、どちらの趣味の装いだろうか。いや、共同作品ということにしようか。浅ましさの証だ、麗しいーとレイアは微笑を浮かべた。
「あんたの服はあんまりねぇ……」
フローラは明確に言葉にトゲを持たせた。
「……どういう意味かしら?」
レイアはフローラが折角出した浅は~かなトゲを楽しむことなく、そのまま受け取った。レイアの身につけるものはゲオルクが何かと理由を付けてくれたものだった。レイアの赤い髪と瞳に合わせたり、さりげなくゲオルクの青い目を匂わすものを添えたりといろいろ考えて贈られたものである。だからというわけではないが、決してそーゆー訳ではないが、レイアは何か言わずにはいられないと、つい口を開いてしまった。フローラに何を言っても伝わらないと身に染みているレイアにしては珍しい行動だった。レイアはフローラの浅はかさをより引き出せるだろうと自分のとった行動に理由を後付けした。
「なに?わかんないの?地味なあんたにお似合いって言ってるのよ!」
フローラはレイアの常にない言い返しに苛立ったように声を荒げた。歯向かわないと思っていた相手に抵抗されるのはお嫌らしい。レイアは悪くないと興が乗ってきていた。あなたもその服お似合い、品性の最悪さが一緒と応酬を交わすのも乙かとレイアは考えたが、やめた。ゾフィーの姿が見えたからである。
「フローラさん、ご機嫌よう」
ゾフィーが穏やかな微笑みをフローラに向けた。
「……姉が迷惑をおかけして申し訳ありません」
フローラはゾフィーに向かってにこっと愛想笑いを返した。レイアに対する苛立ちはもう仕舞ったらしい。また、フローラはゾフィーに対してまだ猫を辛うじて被っているようだ。
「迷惑なんて……、レイアさんは素敵な方です。大変素晴らしい友人ですわ」
ゾフィーとは会ってまだ間もないけれどなぁとレイアは二人のやりとりを見つめた。
「それよりも、フローラさん。殿下にあまり無理を言わないでくださいね」
おお、火花が散っている。キレイキレイ。ピリッとする愚かさがあるなぁとレイアは楽しんだ。
「あっ、そーいえばぁ、殿下と約束があったので失礼しますね、うふふ」
そそくさ~とフローラは去って行った。ゾフィーと一対一の直接対決はしたくないようだ。負けるのがわかっている勝負に挑むバカではないようだ。飛んで火に入る夏の虫は嫌いじゃないんだけどなぁとレイアは物足りなく感じた。もう少しバチバチしていてもよいのにとフローラの背を不満気に見送った。




