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28. コンセンサスを蔑ろにする奴はコンセンサスに蔑ろにされる

 ゾフィーとレイアの楽し~いお茶会からしばらく後、レイアとゲオルクの元を珍妙な客人が訪れた。ゾフィーである。お供もあまり連れていないし、男装している。どうやらお忍びらしい。スタイルのよさが際立ってよくお似合いだ。ゲオルクはささっと人払いをすると、ゾフィーを応接室にこそこそと案内した。

「レイアさん、ごきげんよう」

 ゾフィーはお上品にソファに座った。

「……ごきげんよろしゅうございます」

 愛想笑いを浮かべるレイアはあとはお二人でと言わんばかりにゾフィーとゲオルクに背を向けた。

「レイアさん。今日は()()()()相談したいことがあるのです」

 ゾフィーは穏やかな声でレイアの名を呼んだ。そして、お二人と聞いた瞬間、ゲオルクはレイアの手首をしかと握りしめてきた。離してほしい、私に構わず逝ってほしい。

「いかがなされました?」

 そして、ゲオルクはレイアと一緒にゾフィーの真向かいのソファに座って、話の続きを促した。

「レイアさんのご実家のことです」

「はぁ……」

 実家丸ごとかとレイアは大人しく聞く姿勢をとった。ゲオルク、わかったから。逃げないから、いい加減手を離してほしい。肩に回している手も退けてほしい。許可してないぞ。

「レイアさんの妹・フローラさんが王太子殿下と親密になられてから、殿下はすっかり変わってしまいました。そして……、レイアさんの御両親の振る舞いには目に余るものがあります」

 ほう、早い話、あの人らは宮廷で好き勝手してるのか。圧巻の一言だとレイアは深く頷いた。つけ上がる過程を見るのは今からでも遅くないかなとレイアは期待に胸を膨らませた。

「このままでは殿下のためにならないとわたくしがお諌めしても無駄ですの……。ですから、殿下を御守りするために力を貸してほしいのです」

 ゾフィーは殿下のためで一貫しているなとレイアは思った。

「承りました」

 ゲオルクはスッと返事をした。返しが早いなとレイアは苦笑いが溢れた。即断即決の素晴らしさにならって早いところ私の手をにぎにぎ弄ぶのをやめてほしいものである。

「実は妻の実家については調べていたのです」

 おやおや知らなかったーとレイアは眉根を寄せた。嘘、気付いていた。以前、いろいろ調べたとゲオルクが言っていたような気がしたが、調べたなんて生やさしいもんじゃなかろう。レイアはゲオルクが両親と妹のやることなすこと、かなりのところまで把握しているに違いないと考えている。ただの勘と……、日頃のゲオルクの様子から感じ取っていた。両親と妹に対して並々ならない感情、怒りや許せないという気持ちをゲオルクが持っているような気がする。

 ゲオルクがレイアの両親と妹の暴挙をわかりやすく端的に話している。使用人に対する暴力、賃金未払い、横領、エトセトラ。だいぶやってるなとレイアは耳を大きくして拝聴していた。そして、何と、フローラは王太子に近づくために某令嬢に虐められて可哀想な私を助けて!と一芝居打っていたらしい。何それ〜見たかったわ〜。

「恐らく、彼らは王太子妃の座すらも狙っていると考えられます」

 と、ゲオルクはまとめた。そこまでの野望を!ファンタスティック!とレイアは浅ましさに満たされた。やっぱり、フローラの業突く張りは目を見張るものがある。

「まあ……!」

 ゾフィーは口元に手を当てて、驚きを示した。どうやら、フローラの狙いまでは知らなかったようだ。本当に?勘づくくらいはしていただろう。まあ、いいや。それよりも、ゲオルクよ、指同士を絡ませるのはやめてほしい。もしかして、フローラ案件をゲオルクにほぼほぼぶん投げようとしてたのバレてる?それを怒ってるの?

「では、その時にしましょう」

 ゾフィーの言うその時がいつかわからず、レイアとゲオルクは揃って首を傾げた。

「わたくしが殿下に婚約破棄される時に悪事を暴きます」

 フローラが王太子妃に成り上がろうとするにはゾフィーが邪魔である。ゾフィーが死ぬか、婚約破棄に至るか、どちらかが必要だ。フローラはゾフィーを殺すことに躊躇や罪悪感を感じるタマではないが、条件が揃えば婚約破棄の方が事はスムーズに運ぶだろう。それに、フローラは誰かの後釜に座るのは断固嫌!なタイプである。だから、婚約破棄、すなわちゾフィーを追い落とす場は用意されるはずだ。その時に、フローラ達の暴露をするとゾフィーは言っているのだ。

「ですが……」

 ゲオルクは躊躇いがちに口を開いた。何と言えばよいのか迷っているようだ。レイアも同様の心地である。別に、いつフローラをボコボコにしてもまあ構わないが、その時だと王太子の名に傷がつかないか?とレイアは感じた。ゾフィーは王太子のためにフローラを取り除くのではないのか?

「さすがの殿下もそこまですれば目が覚めましょう」

 ゾフィーは悠然と笑った。有無を言わせない、疑問を持つことも許さない、見る者を圧倒させる笑みである。何も言えまいとレイアとゲオルクは口をつぐんだ。レイアは両親と妹の舞台を拝むとしようかと気持ちを切り替えた。観客席の後ろから五番目くらいで構わない。

「あと、もう一ついいかしら?」

 ゾフィーは人差し指をスッとレイアの前に立てた。

「レイアさんの身の安全のためにも、わたくしの傍にいてほしいの。お友達としてどうかしら?」

「願ってもないことです」

 ゲオルクが頭を下げた。本人の同意は?とレイアはゾフィーとゲオルクを順繰りに見つめた。結論は変わらなかった。

 レイアはこれは傍観に回れないなと諦観の境地に立った。

















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