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22. 何だかんだ言って定番が一番

 というわけで、レイア御一行はヤゴナに向かった。ヤゴナは海が近い交易都市として発展し、鶏肉や味噌などが有名である。いいところだ。いろいろ観光したい気持ちを置いといて、まずはゲオルクがいるらしい宿屋に行くことにした。

「ニコラスさん、ご無事?」

 レイアは宿屋の入り口にいたニコラスに声をかけた。特に目立った怪我はなさそうで、レイアはホッとした。

「レ、レイア様、なぜここに……?」

「心配でいらしたに決まってるでしょう!」

 たじたじしているニコラスに対して、デーテは眦を上げて怒鳴った。お馴染みになってきた光景である。

「ゲオルク様はどちらに?」

 レイアはにこやかにニコラスに訊ねた。

「えっと、その…」

 後ろめたそうにニコラスは目を逸らした。何かあるなとレイアは直感した。

「この建物の中にいるならば、一つ一つ確かめましょうかね」

「一番上の部屋です……」

 観念したようにニコラスは白状した。

「ありがとう、ニコラスさん」

 そして、ニコラスの言われた通りに、階段を上り、最上階の4階に向かった。ニコラスは何やらゲオルクの居場所を教えることに抵抗をしていた。であるならば、何かあるなとレイアの浅はかセンサーが感知していた。やっとのことで階段を上り終えると、ドアが見えた。レイアはノックをせずに、扉を開けた。

「どなた?」

 部屋の中には、驚いた顔のゲオルクとノックもなしに何なの?と訝しげな顔をした女がいた。後から聞くところによると、彼女はこの宿屋の娘でゲオルクを付ききっりで世話していたらしい。ありがたいことだ。

「……ほぅ」

 レイアは興味深そうに顎に手を置いた。

「ち、違うからな!」

 ゲオルクはレイアが何を考えているのか、感じ取ったようで、すぐに女を部屋から追い出した。

「別にいいのですよ、ゲオルク」

 療養先でコレ (小指) を作る。定番で陳腐だが、だからこその味わい深さ、浅はかさがあるはずだ。面白そうなのにゲオルクにその気が全くないとはつまらない。それにしても、ゲオルクはよくモテるなぁとレイアは総括した。

「どうして、あなたはここに……」

 やや気疲れしたような顔色でゲオルクはレイアに聞いた。

「旅行がてらに来てみただけです。お気になさず。存分に羽を伸ばしてくださいませ」

 にっこりと笑いながらゲオルクと様子を眺めた。ゲオルクの怪我の具合がどうかは判断し難いが、とりあえず元気そうかなとレイアは感じて、安心した。

「……さっきの子とは何もないからな」

「左様ですか」

「違うからな!」

 ムキになっているようにゲオルクは否定した。正妻に内緒で他の女性に手を出すような、度胸、甲斐性、移り気、愚かさはないらしい。つくづく清廉な男よとレイアはため息をついた。

「怪我の具合はいかがです?」

「大したことはない」

 ゲオルクは素っ気なく言った。大したことあるだろう、意地っ張りめとレイアは呆れた。

「ちなみに、どこを怪我なされたのです?」

「肩だ。矢を掠めただけで、すぐ帰ろうと思ったんだが……」

「まあ、ゆっくりなさったらいいではありませんか」

 にっこりとレイアは笑みを湛えた。

「では、私は街を回ろうと思います。見舞いの品くらいは買いますが、何か御入用ですか?」

「え、いいのか」

 レイアがデーテの手前、とりあえず言った言葉を嬉しそうに受け止めた。

「何がいいかな……」

 ゲオルクは長考姿勢に入った。何やらぶつぶつ言っている。面倒に思ったレイアはゲオルクの答えを聞かずに部屋から出て行った。そして、デーテの手前、買うと言ったにも関わらず、何も買わないのもなぁと思ったので、きよめ餅と練り物を買った。

 ゲオルクはひどく喜んでいた。










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